数少ない生き残り シトロエンGS ビロトールのレストア現場を訪ねる

このタマス氏を訪れたかった理由がもうひとつ。以前見せてもらったシトロエンGSビロトールの進行具合を見たかった。当時生産台数も847台しかなく、オイルショックの煽りを受けて回収、廃棄という不運な運命を辿ったビロトール。その数少ない生き残りの一台がここで息を吹き返そうとしているからだ。

「マツダのRX7は世界中に広がった。だからパーツも手に入れやすい。でもビロトールはそうはいかない」とその苦労を語った。ガレージのリフトに乗せられていたビロトール。その様子からレストアは順調に進んでいるようだ。実際にエンジンのオーバーホールは完了していた。そして、そのエンジンはすでに元のシャシーに収められていた。ツインローターエンジンはNSUのものなのでドイツでパーツを探してきて組み込むことができたという。是非、エンジンを指導してそのサウンドを聞いてみたいと思ったのだが、まだ全てが整っている状態ではなくエンジン始動にはしばらく時間がかかるという。

リフトからゆっくりと下がってきた。ビロトールとの再会だ。


ボディは曇っていた表面を研磨すると元の輝きを取り戻せそうだということが判明。これはオリジナルの塗装のままで大丈夫そう。現存する台数が少ない希少車なので、できる限りオリジナルの状態を保ちたいところ。

コクピットに並んだメーター類はボビン式ではなく一般的なアナログになっている。

ビロトールにはロータリーエンジンに起因する他のレシプロエンジンとは違うシステムがある。それはロータリーエンジンの熱効率の悪さで排気ガスが遥かに高温のまま排出されるというところだ。そのためエグゾーストパイプは耐熱用のパネルが設けられ、例えば未舗装路などの草木触れて発火させないためなどだ。エキパイの位置も高めにセットされている。比較的それが近い位置にあるトランクルームにも耐熱用のシートが内側にも敷かれているほどだ。

マフラーの位置も高めにセットされている。またリアもディスクブレーキを装備しているのが分かる。

もともとGSという車が大衆車でありながら4輪ディスクブレーキを装備し、DS譲りのハイドロニューマチックなど高級車並みの足回りや装備を持っていた。空冷エンジンのパワー不足を補うためのロータリーエンジンに踏み切ったわけだが不運が重なった上に、そのロータリーエンジンは耐久性がなく消えて行ってしまった車種だ。タマス氏にレストアされたエンジンはどのくらい走るのか?と聞く。当時に比べ現在の方がエンジンパーツの素材や、オイルの性能が上がっているからだ。それでも3万キロくらいしか保証はない。

取り外したオリジナルのエキパイ用の耐熱カバー。


このGSビロトールは売られることはなく、タマス氏のコレクションになるという。なので、次回ハンガリーに戻ってきたとき、レストアが完了したいればこれで、ブダペストをドライブしようと約束をしてくれた。シトロエンのロータリーサウンドを響かせるのを楽しみにしている。

写真&文:櫻井朋成

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