いかにも速そうな「青い小型爆弾」│信じられないほど情熱的なサウンドのブガッティ

Photography:Max Earey

この記事は『世紀の対決、再び「頂上決戦 アストンマーティンvsブガッティ」』の続きです。

サイモン・ディフィー所有のいかにも速そうなブガッティを試す。装備はアストンマーティン・クローバーリーフに比べると最小限で、普通ならフロアがある場所から下の道路が見える。ギアレバーはコクピットの外にあり、2個のボッシュ製マグネトーはエンジンの後方から駆動され、ダッシュパネルに置かれる。マグネトーが2個ある理由は、1.5リッターのOHCエンジンが各気筒2個のスパークプラグを備えるからだ。ほかにスペースがないので燃焼室の横に配置されている。


バルブは各燃焼室に吸排気2個ずつ16バルブである。バルブを動かすのは"バナナ型"タペットで、カーブしたガイドの内部を上下動する仕組みだ。こうして中央に配置した1本のカムシャフトによって、その左右に2列に並んだ垂直のバルブを開閉するという実に複雑な仕組みだ。タペットのガイドを削り出すのは、困難を極める作業だったに違いない。


 
このブガッティもウォーターポンプを備える。また、アストン同様、真鍮ボディのゼニス製キャブレター1基だが、こちらはサイドドラフト式ではなくアップドラフト式だ。一方、ブレーキはアストンが前後輪に働くのに対して後輪だけで、ハンドブレーキによってブレーキドラムを操作する。ホールブレーキのほかに、フットブレーキでトランスミッション・ブレーキを作動する。
 
このブレシアのヒストリーについて、オーナーのサイモンが知っていることは少ない。ヘレフォードシャー州のブガッティ・スペシャリストであるウルフ・ゾイナーが、歴史家兼ディーラーでレーシングドライバーのコリン・クラッブから入手したパーツを、1970年代に組み立てたということだけだ。ここ10年ほどは、イギリスのブガッティのメンテナンスならすべてにおいて第一人者であるアイヴァン・ダットンが面倒を見てきた。変動はするが比較的安定したアイドリングから判断するに、今日の調子は上々のようだ。
 
ブレシアはほとんど"おもちゃのような"ブガッティだ。エンジンは小型で、車重はわずか450kg。サイモンによると、ERAの創立メンバーであるレイモンド・メイズ製のカムシャフトを装着し、出力が60bhpに向上しているというから、100年近く前の車とはいえ、たいへんなペースが見込める。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. )  Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:John Simister 

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