これ以上ないスリルが待ち受けていた ?! ル・マンに出場したポルシェ930ターボに試乗

Photography:Jonathan Fleetwood

この記事は『びっくりするような事実が次々と明らかに・・・特別なポルシェ930ターボ』の続きです。

この車がいかにノーマルな状態にあるかを今一度おさらいしておこう。車体以外の点でもオリジナル性は高い。厳密にいえばゴム球のセンターキャップこそ当時のものではないが、3ピース構造のBBS軽量ホイール(レース参加に備えてサイズは標準より幅広い)や、体型にぴったりフィットするコルビュー・シートも当時のままである。もちろんこれらのパーツはコンペティションのために装備されたもので市販車とは異なる。その代表格がロールケージだが、それを装着するための車への改造も極力抑えられている。

普通ならロールケージを付けるにはドアポケットなど外してしまうところだが、ここもできる限り残し、一部に大きな穴を開けて貫通させるという徹底ぶりだ。遠いギアレバーもレバーの部分のみクランク状に曲げたものに付け替え、シフトしやすいようにドライバーに近づけている。こういうことは普通はやらないが、個人がル・マンを走ろうとするには必要な手段というべきである。


 
もしあなたに乗る機会が巡ってきたとしても躊躇する必要はない。ゆっくり走り出すことは可能で、そういう時には930ターボは従順に走ってくれるだろう。が、ひとたびオルガン・タイプのスロットルを床まで踏みつければレヴカウンターの針は6650~7000rpmのオレンジの部分まで一気に飛び込む。しかし街行く人が顔をしかめることはないはずだ。車内で感じるほど外で聞く音は勇ましくないのである。乗り心地もレースに出場した車とは思えないほど平和だ。私たちが走った時のエグゾースト・システムはいわゆる"素通しの"『ル・マン・システム』ではなく、排気系をチューニングした『コルサ』と径も太さも見かけも近いもので、荒々しさもほどほどだった。
 
けれどもポルシェが本気になって裾をたくし上げたとしたら、あなたはそれまでとはまったく異なる世界を感じるに違いない。初期のノーマル・ターボの出力は260bhpだったが、この車は明らかにもっと力強いのだ。ポルシェに精通した人が言うには、ターボラグは体感上もっとパワフルに感じさせ、380bhp(ダイナモ上では後輪の計測で315にすぎなくても)かそれ以上に感じるだろうと推測する。パワーは後輪から発揮されるが、同時に車の反対側、すなわち前輪にも影響を及ぼしフロントタイヤは予期した以上にグリップを得ようと路面を攻めたてようとする。ありがたいことに930ターボに特有の悪名高い「いきなりオーバーステア」は経験せずに済んだが。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:James Elliott  Photography:Jonathan Fleetwood

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