びっくりするような事実が次々と明らかに・・・特別なポルシェ930ターボ

Photography:Jonathan Fleetwood



だが、彼を"シロウト"と侮ってはいけない。というのは、彼は映画『バニシング・ポイント』のエグゼクティブ・プロデューサーであっただけでなく、ヒストリックカー・ラリーである"TOUR AUTO"の常連でもあるからだ。

さらにルパート・クレヴェリーとルードヴィッヒ・リンゼイの相棒役を務めて腕を上げたのち1996年からはレースにも出場している、まさしく"強者"と呼ぶにふさわしい人物なのである。
 
レースカーを見る目も一流だ。930ターボのほかにもCUT7とライトウェイト49FXNという2台のジャガーEタイプを所有している。彼のロードカー歴を見ると最初の1台目から選んだ理由がユニークだ。TVRグリフィスは簡単に横滑りさせられる獰猛さが気に入ったのだという。その後はアストンDB5を経てフェラーリ330GTC、365GTC後期型へと続き、後者は今でも所有している。 

彼の夢は、現在は他と何ら変わらないかのように見えるこのポルシェ930ターボを、じつは特別な1台だということを世に知らしめることだ。

「この車は一般登録されており、いつでも公道を走れる準備ができています。私はこれまでもそうしてきましたが、年に2~3回はこの車で旅行に出かけたいと思っています。でもそれだけじゃもったいない。この車にとっては故郷ともいうべきル・マンにも走らせてやりたいと考えているところなんですよ」


 
930ターボに傾ける愛を語ったあとで、こうも付け加えた。
「車に対して何か特別な装いを凝らそうと考えているディーラーはゴマンとありますが、そのような手法で作られた車を手にした人は他人の目をごまかせたとしても一生涯、それが贋作であることを背負って生きなければならないんです。それを完全に忘れてしまっては、車に刻まれた痕跡も永遠に失われます。それは異常なことと言わねばなりません。この車は名誉をあえて唱えず、また速いことを声高に叫ぶわけでもなく、多くの点で奥ゆかしい。そこがほかの車と大きく違うところなんです」


乗り心地は想像しているより平和だった・・・最終回へ続く

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:James Elliott  Photography:Jonathan Fleetwood

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