アウディの四輪駆動の生みの親を訪ねて│本領を発揮するクワトロ

Photography:Stefan Warte


 
ところでローラント・グンペルトの名前に聞き覚えはないだろうか。彼は2005年から12年にかけて生産されたスーパーカー「グンペルト・アポロ」の生みの親である。残念ながらグンペルト社は破産し、現在は新たな出資者による新体制で事業を「アポロ・オートモビル」の名称で再開している。一方ローラント・グンペルトは、中国のアイウェイズ社と「グンペルト・アイウェイズ」を設立。取り扱いが難しい水素ではなく、水とメタノール混合の混合物を用いる燃料電池車両「ナタリー」の開発を進めている。昨年、ジュネーヴ・モーターショーで披露された4モーター・スポーツカーだ。



「クワトロはイルティスから派生したようなものです」と笑顔で語るグンペルトは今年で70歳代半ばだ。「事前開発部門のリーダーをしていた頃、フェルディナント・ピエヒから"軍用車開発をやりたいか"と電話を貰ったんです。ムンガは汎用性に優れていて軍用オフローダーだけでなく、救急車や消防車としても活躍していました。次世代モデルも同様の汎用性が求められていましたね」
 
だが、参考にしようともムンガは手元になく、農家の納屋に眠っていた一台を入手。ただ、ボディは穴だらけで、若いメカニックにビール1ケースと引き換えに修理してもらったそうだ。

「まず、アウディ80からエンジンとフロントアクスルをムンガに移植しました。これで前輪駆動の軍用車ができあがりました。次に四輪駆動であることを求められていたので、リアにも同じくフロントアクスルを移植しました。ただ、トランスミッションは切り離し、同じ場所にディファレンシャルを取り付けたものです。プロペラシャフトはBMWのものを流用し、アウディ初の4WDモデルが暫定的に完成したというわけです」
 
こうしてクワトロの原型が完成したのは1970年代半ばのことだった。"改造ムンガ" は約20台が組み立てられ、ドイツ軍によってトリーアにてテストされることとなった。時期同じくしてアウディは、フィンランドで市販車のウィンターテストをおこなうことになっていた。グンペルトは続ける。

「フィンランドのテストで高出力エンジンの話が出ました。当時のアウディの前輪駆動車に6気筒エンジンは大き過ぎましたが、5気筒エンジンなら既存の組立てラインでも生産・取り扱いができるという結論が出ました」


四輪駆動を見せつけることに・・・次回へ続く

編集翻訳:古賀貴司(自動車王国) Transcreation:Takashi KOGA (carkingdom) Words:Glen Waddington Photography:Stefan Warte

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事