試行錯誤でトラブル続きだった ?!│ポルシェの長距離レースへの挑戦

Porsche AG

かつて、スイス人レーシング・ドライバーのリコ・シュタイネマンが、急なバンクを擁するオーバルコース、アウトドローモ・ナツィオナーレ・ディ・モンツァで新記録を打ち立てた。

1967年のレース・シーズンが佳境を迎えた夏の夜、リコ・シュタイネマンと彼の同僚であるスイス人ドライバー、ディーター・スポエリーは、ビールを片手にオフシーズンの計画について話していた。そこで出たのが、「72時間と96時間、1万5000km、2万km、そして1万マイルの耐久走行に挑戦してみてはどうか?」というアイデアだった。

「60年代のレース全般にいえることですが、長距離レースにおいて新しい技術的な知識を得ることは非常に重要なことでした」。そう語るのは、当時ポルシェ・モータースポーツ開発担当責任者だったペーター・ファルクだ。現在ではデジタル化が進んでいるが、当時の自動車業界にはまだコンピューター・シミュレーションが存在しておらず、試行錯誤を繰り返して学ぶ他なかったのだ。

「レースに勝てば良い宣伝にもなりますし、新記録の樹立という目標を掲げれば開発に熱も入ります。我々はリコ・シュタイネマンのアイデアを受け入れて、新記録に挑戦しようと決意しました」。こうして、オイルメーカーのBPスイスとタイヤメーカーのファイアストンがスポンサーとなり、リコ・シュタイネマンとディーター・スポエリーのコンビに同じスイス人レーシング・ドライバーのジョー・シフェールとチャールズ・フォーゲレの2名を加えてチームを編成し、4日間の耐久走行を乗り切るための準備が進められていった。

10月29日の日曜日、いよいよ記録への挑戦が始まった。スタートラインに着いたのは、ジョー・シフェールである。その日のドライバーは、1時間半ほどステアリングを握り、その後4時間半の休憩を挟むというサイクルだった。メカニックたちは準備を整えてピットで待機している。

オクタン編集部

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