約100年前!モータースポーツの基盤を築いた1921年に初開催された「200マイルレース」

Photography: Paul Harmer

1907年、世界で初の常設サーキットとして、ロンドン西方20マイルほどのウェイブリッジに、大小ふたつのバンク付きコーナーを広い直線で繋いだ楕円形コースが完成した。ブルックランズと名づけられたこの超高速サーキットでは、さまざまな名勝負が繰り広げられたが、なかでも英国で最初のライトカーによるレースは、英国のモータースポーツの基盤といえるものを形成した。往時の参加車両のうち、3台がほぼ100年の時を超えて同じ舞台に集った。

20世紀初頭、自動車の黎明期における英国および英連邦には、おおむね1500ccまでの小型車を指すライトカー/サイクルカーというクラスがあり、中産階級以下への四輪車の普及に大きく貢献した。庶民はこぞって手の届く"クルマ"を購入し多くのクラブ、専門誌が生まれ、それはまた当然のごとくモータースポーツにも使われた。ライトカーによる英国初のレースはブルックランズ・サーキットで催され、英国におけるモータースポーツの大衆化の基礎が形成された。


1912年に、その当時流行の先端だったサイクルカー・クラブとして設立されたジュニアカー・クラブ(JCC)は、1920と30年代にはブルックランズ・サーキットで開催されるイベントの主要主催者のひとつだった。サイクルカーブームが去った1919年にJCCに名称を変更し、第二次大戦後にブルックランズ・オートモビル・レーシング・クラブと合併して、ブリティッシュ・オートモビル・レーシング・クラブ(BARC)となって現在に至っている。 
 
JCCは英国初の24時間耐久レースである1929〜31年のダブル・トゥエルブやインターナショナル・トロフィーなど、しばしば画期的なレースを企画した。しかし中で最も意欲的におこなわれたのはライトカーのための「JCC 200マイルレース」だった。ヴィンテージ期(1919〜30年)にレーシングカー発達の孵化器となったレースの全容を解き明かす。

ブルックランズ・サーキットをメインにして、計11回を数えた200マイルレースは1921年10月22日に初開催された。それは第一次後の英国で初めて開催された長距離レースであった。実際の距離は201マイルと198ヤードであり、つまりブルックランズ・サーキットの外周路74ラップであった。1000ccと1500ccの2クラスに分けられていたが、走るのは一緒で、参加車両はライディング・メカニックを乗せなければならなかった。総合優勝者にはT.B.アンドレ(後に自身の名を冠した車も製造)から金の優勝カップが手渡された。アンドレはフランス車のマルボローを扱うディーラーを経営し、かつ自身もマルボロー1100ccで参戦していた。38台という多数の参加車両を並べるため、グリッドは4列に分けられた。それぞれの車両には黄、赤、緑、白など異なる色のボンネットストライプが義務付けられ、全車に12インチ径のカーナンバーサークル表示が求められた。

編集翻訳:小石原耕作(Ursus Page Makers)  Transcreation: Kosaku KOISHIHARA (Ursus Page Makers) Words: Allan Winn Photography: Paul Harmer 取材協力:ブルックランズ・ミュージアム、ジェームズ・チェーン、 フランシス・ガラシャン、ロバート・グラバー、ジュリアン・テーラー、キース・テーラー。

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