現代へと受け継がれるスピリット│アルピーヌA110が辿ってきたヒストリー

1963年に登場したアルピーヌA110は世界屈指のラリーにおいて、数々の栄光を残してきた。2017年には新型A110として復活し、さらに2019年にはA110Sが誕生。そのボディ構造や性能には、今も変わることのない哲学が注ぎこまれている。

アルプス山脈を語源とするアルピーヌは、当時ルノーのディーラーを経営していた実業家でありラリードライバーでもあった、ジャン・レデレが1955年に創業したスポーツカーメーカーだ。RWDのルノー 4CVをベースに製作した、空力性能に優れたFRP製のオリジナルボディをまとったアルピーヌA106がフランスのアルペンラリー・クープデザルプやイタリアのミッレ ミリアなどで活躍し、一躍注目を集めることになる。
 
ジャン・レデレはルノーからの資金援助を受け、モータースポーツへも積極的に参加。60年代にはオリジナルの鋼管製シャシーにルノー ドフィン・ゴルディーニのエンジンを搭載したA108 が登場する。2シーター・クーペのほか、2+2のモデルなども作られた。フロントまわりのデザインにはこの頃から既にA110の面影が見てとれる。
 
1963年、ルノー8をベースとしたA110が誕生する。ブレーキは4輪ディスクに、リアサスペンションにはセミトレーリングアームを採用し、操縦性が向上した。時を同じくしてスポーツプロトタイプカーの開発にも着手し、ル・マン24時間レースにも参戦を開始。1966年にはアルピーヌA210で1位から3位までを独占し、耐久レースの世界でも存在感を増していく。
 
956ccではじまったA110は、のちに1100、1300、1500、1600と排気量を拡大していく。A110は軽量コンパクトなボディを武器にラリー界を席巻した。1971年に欧州選手権で勝利。73年には、それまで世界各地で行われていたラリーイベントがFIAによって一本化され、WRC(世界ラリー選手権)が始まった。その開幕戦となったモンテカルロ・ラリーでA110が見事に優勝。初年度となるその年の、マニュファクチャラーズタイトルを獲得している。A110は、1977年に生産が終了するまで多種多様なエンジンおよびモデルバリエーションが展開され、アルピーヌの代名詞となるモデルになった。
 
ビジネス面では1973年にルノー傘下となり、正式社名は「ソシエテ・デ・オートモビル・アルピーヌ・ルノー」となっている。フランス北西部のイギリス海峡に面した港町・ディエップでA110やA310、その後V6やA610といった市販モデルをはじめ、ル・マン用のレースカーなどもここで生産された。しかし、1995年にはアルピーヌブランドとしての量産モデルの歴史は一旦途絶えることになる。アルピーヌは黒衣となるもディエップの拠点で継続して、ルノーのスポーツブランドであるルノー・スポールのスピダーを皮切りにクリオRSやクリオV6、メガーヌRSなどの開発、生産を担当していた。そして現在の新型A110もこのディエップで生産されている。ルノー・スポールおよびアルピーヌにとってディエップが聖地と呼ばれる所以だ。

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