プールにひしめく12台のポルシェ│空想?現実?車とアートの世界

Porsche AG



ラブロイの仕事は沈黙のプロセスを積み重ね、夢の世界をモニターに描き出す。彼が3Dグラフィックで描く情景は、穏やかで、独特の静けさを放つ。本棚の下のラックに置かれ A2プリントのグラフィックがまさにそうだ。モダンな別荘のプールの中に12台のパールブルーのポルシェがひしめき合って浮かんでいる。ここで重要な役割を果たしているのが、背景の洗練された建築物だ。カリフォルニアのパームスプリングスにあるお洒落なケース・スタディ・ハウスのプールであったり、眩いネオンを放つモーテルの駐車場であったり、70年代の前衛的な日本建築の街並みであったり。



建築物のリアリティを高めるため、ラブロイは常に緻密なプラニングを慎重に行っていく。「巨大なライブラリに、ありとあらゆるマテリアルやテクスチャー、サーフィスをアーカイブしています。このライブラリのお陰でどの建物もほぼ写真のようにリアルに再現することができるのです」。彼は自前のカメラで常に新しい素材やモチーフを探し求めている。



彼の作品はウェブサイトで閲覧できるが、今のところ実物が見られる専用のギャラリーは存在しない。作品を販売して生計を立てているわけではない彼にとって、全く必要ないためだ。「今のところは、ですけどね」と、思わせぶりな笑みを浮かべるラブロイ。現在のところの本業は、代理店や出版より持ちこまれるイラスト制作の仕事なのだという。

ラブロイは気分転換に赤いケイマンでドライブに出る。「モータースポーツと公道、両方をカバーするポルシェのエンジニアリングを私は深く信頼しています」と話す。ポルシェからコンスタントに新モデルが登場することが楽しみらしい。ポルシェのスポーツカーを、彼は珠玉の「作品」として捉えているのだろう。

ラブロイはいつの日かスコットランドで、制限速度を超えるハイスピードで心おきなくポルシェを走らせたいと願っているのだとか。ドイツのアウトバーンが理想だが、スコットランドではそうもいかない。「警察は非常に厳しく、慈悲は皆無。小さな田舎道であってもルールは絶対ですからね」。

その反動がラブロイの作品をドライブしているのかもしれない。加速していく空想の世界を、イラストの世界へ反映させているのである。

オクタン日本版編集部

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