4台のポルシェが肩を寄せ合う小さなガレージ│有名建築写真家の「小さな4人の家族」

Porsche AG

世界的に有名な建築写真家、フェルナンド・ゲラ。彼の手にかかれば、どんな建築物も優美なラインで表現され、軽やかに動きはじめる。“静” なる建築物に “動” を与える類い希な才能を持っているのだ。ポルトガルで暮らす彼が愛しているものは、リスボンのガレージに置いている4台のクラシック・ポルシェである。

彼のガレージは、リスボンの中心地にあり、見た目はごく普通。大都会の喧騒から逃れるように、ひっそりと建てられたこの白塗りのガレージは、彼の生活において大きな意味をもっているという。頑丈なゲートの奥にあるのは、静寂に包まれた幅約8メートル、奥行き約8メートルの殺風景な空間。決して広くはないその場所に、4台のポルシェが肩を寄せ合うように置かれている。ゲラの “小さな家族” が集うこの場所は、彼が仕事を忘れ、心身共にリラックスすることができる唯一のスペースなのだ。



ゲラが赤い布を取り払うと、黒い輝きを放つポルシェ 911 カレラ4(964)が現れた。「ここは狭いですが、4台の美しさに変わりはありません」と語る彼は、「私はテトリスも好きなのですよ」と笑いながら巧みに車を表に出す。

彼は16歳のときに初めてカメラを手にし、虜になった。そしてその後、車の美しさに気付き、また虜に。「初恋の相手を覚えているかって?いや、覚えていませんね。強いて言うなら、1986年のレーシングカー ポルシェ956ですかね」

「22歳のときに、父親に1973年の中古ポルシェ 911S タルガを買うよう勧めて、購入後にはすぐに自分の所有物にしたのです」。その一台は今でも所有しており、1995年 911 タルガと 1979年 928に挟まれている。「私は決してコレクターではありません。時間が許す限り愛車のステアリングを握り、大げさ聞こえるかもしれませんが“人生を共に駆け抜けていきたい”と思うのです」。

彼は964に被せられていたカバーを取り払い、運転席に腰を下ろしイグニッションキーを回す。唸りを上げるエンジン音がガレージに反響し、この空間の静けさを切り裂いた。そして電動ゲートが開くや否や、燦々と降り注ぐポルトガルの太陽の下へ踊り出した。目指すは市街地を一望できるモンサント森林公園へと続くワインディングロードだ。走っている最中、ゲラはぽつりとつぶやいた。「10代の娘はもう父親に興味がほとんどないようですが、ポルシェに対しては別のようですね」。



ゲラが仕事以外に対して抱いている願望は、自ら所有するスポーツカーに “適切なスペース” を与えてあげることだという。彼はリスボンから60kmほど離れた場所に小さな家を所有しているそう。「そこに私の “4人家族” を置いておける位のスペースがあります。完成したらまた遊びに来てください」。楽しそうに笑いながら964を巧みに車庫に入れた。

エンジンの火が消されると、ガレージは再び静寂の空間へと戻った。"動"と"静"のコントラストが、この彼とポルシェだけの空間でも、巧妙に計算されているのかもしれない。

オクタン編集部

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