ピンク色のロールス・ロイスが作られた理由│ある一人のDJによってスタートされたプロジェクト

Rolls royce

ピンクの車体色といえば最新のトヨタ・クラウンで大きな話題となったが、ロールス・ロイスの注文製作部門(ビスポーク・デパートメント)も、内外装をピンクでコーディネイトしたゴーストを製作したことがあった。
 
このピンク色のゴースト(モデルはエクステンデット・ホイールベース)は、乳がん患者を支援するイギリスの慈善団体である、"ブレスト・キャンサー・ケア"の活動を支援する寄付金集めを目的として製作された。
 
この計画を提唱したのは、イギリスの人気DJであるクリス・エヴァンスだ。エヴァンスは大の車好きとして知られ、オークションで1961年フェラーリ・スパイダー・カリフォルニアSWB(俳優のジェームズ・コバーンが所有していた)を、同モデルとしては史上最高額で落札したエピソードを持つほか、250GTOを含む世界有数のコレクションを所有している。
 
いかにも車好きが考えたらしいこの資金集めの計画は、“FAB1ミリオン・プロジェクト”と名付けられ、総額100万ポンドを目指すとした。
 


乳がんの正しい知識を広め、乳がん検診の早期受診を推進する世界規模の啓発キャンペーンのシンボルがピンクリボンであることはよく知られており、このキャンペーンにはピンクが用いられることが多い。それでは、なぜ"ロールス・ロイス"か、"FAB1"なのかという謎解きをしておかなければならない。
 
このヒントは、1960年代にイギリスで製作された人形劇『サンダーバード』にある。この人形劇は当時、日本でもNHKが放送していたのでご覧になった方もおられるだろう。どこか南の島に本拠を置く、非営利の国際救助隊という組織が災害現場にサンダーバードと名付けた特殊機材で乗り込み、無事に災害現場から人々を救出するというSFストーリーであった。国際救助隊のロンドン支部を務めるペネロープ嬢が執事のパーカーに運転させて登場するのが、6輪車のロールス・ロイス特装車であり、そのナンバープレートが"FAB1"であった。


 
現代の"FAB1"は、ピンクの車体色にシルバー・サテン仕上げのボンネットを組み合わせている。内装はクリームのレザーだが、随所にピンクリボンのマークが刺繍され、サイドシルには"FAB1 In Support BreastCancer Charities"と刻んだプレートを配している。
 
ロールス・ロイス社がクリス・エヴァンスの発案に協賛して製作。完成後は、1年間にわたって各種の催しに貸し出され、その収益が"ブレスト・キャンサー・ケア"に寄付された。

文:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Words: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.)

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