「食」をテーマにした写真展「Comte-コンテ」1年がかりで撮影、制作した作品たち

Photography:Tomonari SAKURAI

コンテというチーズはフランスで最も消費される一番ポピュラーなチーズ。「食」をテーマにした写真展「Comte-コンテ」の第一弾にこのコンテチーズを選んで1年がかりで撮影、制作された。スイス国境近くのジュラ地方。ジュラシックパークのジュラで太古では恐竜がたくさんいた地方でもある。山脈の中、山に囲まれた厳しい気候の中で育まれコンテチーズの歴史は1000年以上と言われる。コンテチーズはこの地方のモンベリアール種の牛のお乳を使い、チーズ工房で作られたチーズを熟成庫で最低6ヵ月熟成して市場に出る。

100年前と同じ製法でチーズを作る工房や、ナポレオン三世によって建てられたフランスで2番目に大きい要塞あとを熟成庫にした所。そして、雪に囲まれた厳しい冬などをこの作品展のための撮り下ろしだ。


その小作品の刷り見本に、これで行こう!という見本である写真家側からの承諾のサインをしたもの。ちなみに、完成作品とはサインが別のものになっている。

コンテチーズが工房でできあがると、熟成庫で6ヵ月静かにコンテチーズになる時間を過ごす。静かにと行っても熟成士達は毎日1つづつ塩水で洗い、まんべんに呼吸が出来るように1玉40kg以上のコンテチーズをひっくり返していく。

6ヵ月を過ぎると熟成士がやはりひとつひとつをチェックしてそれぞれのチーズの個性を見極めそれに合わせたさらなる熟成を進める。6ヵ月で市場に出るもの、12,18,24ヵ月とそれぞれのチーズの最高の状態で出荷していく。通常24ヵ月が最長だが、中には48ヵ月などと言う珍しいものまで熟成庫にはある。このナポレオンの建てた要塞の熟成庫には常時30万個のチーズがその時が来るのを待っているという。「我々がチーズを作るのではなく、自然の、大地が生み出したチーズを手助けして最高の状態にしてあげるのが我々の仕事だ」熟成士の言葉だ。
 

刷り上がった作品を前にする人間国宝ファニー・ブーシェ。人間国宝といえ、一発で決まるとは限らない。何枚も原版を作り直して見比べて、納得いくまで続けられる。

その写真を19世紀の技法エリオグラビュ−ルで表現。19世紀写真の黎明期に生まれた技法でその手間がかかること、テクニックが必要なことから衰退してしまったそのプリント技法を現代に蘇らせた工房Atelier Helo’gでプリントされている。プリントを担当したのはフランス人間国宝であるファニー・ブーシェ。版画のエッチングのように銅版でネガの原版を作り、一枚一枚彼女の手によってプリントされていく。デジタルフォトが主流で無限にコピーされていく写真とは違い、ひとつひとつ人の手でプリントされた作品となっている。これも本来はプリントの時にアトリエに写真家が一緒にいて色や、トーンなどを確認しながら行うもの。フランスは日本の自粛とは比べものにならない厳しい外出禁止令のなかで毎日、ネットを使って進行状況の確認、指示などを行った。


ビューイングは3密回避のため1回3名限定1時間という時間制限付きの中行われた。

もちろん色味は本物を見なければいけないので宅急便で送られてきたが、それも通常2日ほどで届くものが1週間もかかったり。そんな特殊な環境でプリントが行われた。写真展は本来5月19日から5月31日までの2週間、東京、馬喰町のルーニィ247ファインアーツで行われる予定だったが非常事態宣言の自粛に合わせて延期となった。しかし、せっかくの作品を早く見ていただきたいという思いから3密を回避し、安全に見ていただくという事から先週の週末、そして今週末は予約制でプレ・ビューイングというイベントに切り替えている。見て、触れて、感じるアート、エリオグラビュールはこの機会に見ることが出来る。


アトリエは市が管理しており、厳格に一名のみしか入れないという措置が執られていたので公園で密会するように最後の色合わせを行っている。

フランスの伝統と風土が作り上げるコンテ・チーズを19世紀の技法でフランス人間国宝が手がけた作品を日本で見ることの出来る貴重な展示となる。このウィルスの状況によるが、本展示は12月に延期ということになっている。一足先にビューイングに出かけるのはいかがだろうか?すでに満員の回もあるが、運が良ければ参加出来る回もあるようだ。興味のある方は下記まで。


https://www.roonee.jp/exhibition/room1/20200518123754

特設ページ
https://www.facebook.com/lalumiereenGourmand

文:櫻井朋成 words: Tomonari SAKURAI

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