「伝説のボンドカー」アストンマーティン DB5にまつわる様々なエピソード

Photography:Matthew Howell

この記事は『最も有名なボンドカー アストンマーティンDB5でロケ地を訪ねる』の続きです。

アストンマーティンDB5はまさにジェームズ・ボンドの車で、イアン・フレミングの著書を読み込んだダニエル・クレイグによれば、ボンドには「気性の荒さ」が垣間見えたとのことだ。そして、DB5も激しく乗りこなされるのを喜んでいるように私には感じられた。

 
ハイランドの周辺のA82号線は長い直線が多く、交通量も少ない。DB5を"グラントゥリスモ" に相応しい速度で走らせ、数台のトラックをまとめて追い越す。その間、『スカイフォール』のロケ地を見物に来た車と何台か遭遇したが、このDB5に気付いた人はどれほどいただろうか。それほどシルバーバーチのボディカラーが湿った色味のない背景に自然と馴染んでいたのだ。
 
2013年に『スカイフォール』のプロモーションが終了した後、DB5はアストンマーティンワークスへと戻り、入念なレストアを受けた。同社のスタッフと話していると、映画の準備を任された事を名誉に思っているのと同時に、準備に短時間しか与えられなかったことに多少の不満も感じていたようだ。このあたりの経緯を同社のキングスリー・ライディング・フェルス取締役が語ってくれた。
 
「2011年の中頃に電話があり、通常14ヶ月かかる仕事を約7週間で終えてほしいとの依頼を受けました。幸運にも、お客様からフルレストアの依頼を受けてDB5をお預かりしたばかりで、撮影に協力していただけることになりました。厳しい日程でしたから、塗装を塗り直すことと、走行できるように整備するくらいしかできなかったのです。それでも、2名がまったく休みなしで一日に14時間も掛かりきりで作業に当たったのです」



 
ボンド映画にDB5が登場する場合、通常では最低2台の同型車を必要とする。過去4本の作品では、出演車両やドライバーは、ギャリーとダレン・リッテン兄弟が経営するアクションビークル社という専門の会社が手配しており、『スカイフォール』では、主にダレンが関わった。
 
「通常、1台は運転シーンで使われ、もう1台はトラックの荷台に乗せて撮影する車内シーンで使われます。実際に2台しか用意しないのは希で、チェイスシーンに使われたアウディA5などは、同じものが16台も用意されていました。また、どの車体がどのシーンで使われたかを管理するのは難しいですが、すべて同じように見えるべきなので、私たちが正しく仕事をしていればあまり気にすることでもないのです」
 
EONプロダクションはボンドカーのDB5を1台保有しており、1995年の『ゴールデン・アイ』のチェイスシーンにも出演させた。その車を『スカイフォール』でも使うため、アストンマーティンワークスにあった1台をこちらに合わせる作業を行なったのだ。同社のレストア管理者であるミシェル・ハリソンは次のように説明している。
 
「比較のため、EONの車は定期的に作業工場に運ばれてきました。これに合わせてボディを再塗装し、装飾品の色味を合わせるのは簡単でした。内装の状態は比較的よかったので、革張りのシートを茶から黒に染め変えて新品に見えないように軽く使い込んだ風合いを出し、カーペットは敷き代えました」

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:数賀山 まり Translation:Mari SUGAYAMA Words:Mark Dixon 

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