完成したときには時代遅れ・・・│6年もの時間がかけられ製作された「ドリームカー」

carstyling

この印象的なガルウィングを持つコンセプトカー フォード・クーガー406は、1956年に次世代のサンダーバードを予感させる8分の3スケールモデルとして1962年に登場した。跳ね上げ式のドアは、1954年に登場したメルセデス・ベンツ300SLのガルウィングに感化されて採用されたようだ。

しかしながら、1956年にプロジェクトがスタートしてから実物大で製作されるまでには6年の歳月を要した。したがって、この車が1962年のシカゴ・オートショーでお披露目されたとき、すでにデザイントレンドから外れた時代遅れなスタイルとなっていた。とはいえ、クーガー406はガルウィングドアを採用した世界で2番目の車(ドリームカーとしては初)であり、しかも電動開閉式だった。

点灯時に開く格納式のヘッドライトも斬新で、ショーに訪れた人々を驚かせた。406立方インチのフォード製 V8エンジンは405bhpもの最高出力を誇っていた。ボディカラーは華やかなメタリックレッドが選ばれた。



製作を手がけたのは、ディーン・ジェフリーズという名の、映画車製作でも活躍していたカスタマイザーだ。このような車がなぜ誕生したのかについては諸説あるが、ジェフリーズが映画のためにドリームカーを製作し、フォードがそれに便乗した、という説が有力だ。

この車は、1963年のデビッド・スウィフト監督、ジャック・レモン主演のブロードウェイ喜劇を映画化した作品『ヤム・ヤム・ガール』に登場している。ジェフリーズはこれを皮切りに、クーガーⅠに次ぐフォードのショーカーとしてクーガーⅡを、わずか18カ月後に製作している。今度はACコブラのシャシーにプラスチック製ボディを纏ったクーペだった。

役割を終えたあと、ライトブルーに塗り直されたクーガー406は、現在ミシガン州アレンパークで個人がひっそりと所有しているといわれている。ちなみに、1967年に登場したマーキュリー・クーガーは、これら2台のドリームカーとは何の関係もなく、フォード・マスタングから派生したものである。

オクタン日本版編集部

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