最も有名なボンドカー アストンマーティンDB5でロケ地を訪ねる 

Photography:Matthew Howell

ジェームズ・ボンドの映画では車が重要な役割を担っている。007のオールドファンにとっては、"ボンドカー"として活躍したアストンマーティンDB5は忘れ得ぬ存在だろう。シリーズ50周年の節目となった『スカイフォール』では、ボンドのプライベートカーとしてDB5が登場するという心憎い演出が成されている。本誌は"出演車"をロケ地に運んだ。

『スカイフォール(原題:Skyfall)』には数々の車が使われているが、嬉しいことに最も有名なボンドカーであるアストン・マーティンDB5が重要な配役を得て登場している。2006年にダニエル・クレイグが初主演した『カジノ・ロワイヤル』に一瞬だけ現れ、次作での登場を期待したものの、2008年の続編『慰めの報酬』にはまったく登場せず、がっかりしたファンもおられたはずだ。
 
DB5ボンドカーの再登場に感激した私は、アストンマーティンワークス社(旧:ワークスサービス社)のジェネラル・マネジャーを務めるグラム・ダービーに映画に使われた車の所在を尋ねてみた。
 
「オフィスのすぐ外にあります。貸しましょうか」との答えを聞いた私は、即座にDB5を映画の撮影地であるスコティッシュハイランズへ運んで撮影をしようと考えた。だが、調べてみると、ジェームズ・ボンドが幼少時代を過ごしたというスコットランドの「スカイフォール」は架空の地名であり、ロケに使われた家もスコットランドではなく、サリー州に映画のために建てられたものであることがわかった。背景の山々もCGによって加えられ、家は映画の終盤のシーンで完全に破壊されて跡形も残っていない。


 
だが、諦めきれない私は、ボンドが上司の"M"を幼少時代の家に連れて行く際、DB5を一瞬停めるシーンがあることに注目した。そこでふたりは深い峡谷を見下ろすのだが、その場所が実在することがわかった。
 
アストンマーティンワークスへの電話から2週間後、写真家のマシュー・ハウエルと私は、スコットランドのグレンコー(Glencoe)から1~2マイルほど離れたグレンエティーブでDB5を前にしていた。雨がしとしと降り、アストンのボディに水滴が流れ美しい演出効果になった。これ以上にない喜びだ。このDB5は、映画撮影の7週間前に外装の補修を行なったばかりの個人所車であったから、距離を増やさぬように現地までトランスポーターで運んだ。オーナーは"国際的な大富豪"だという。
 
『スカイフォール』の撮影では、映画の車輌管理者でも見分けがつかぬほど、瓜ふたつの2台が使われていたという。映画をスロー再生した調査の結果、私達が借用したDB5が走行シーンで使われ、この1台のみが映画に映っていたことが判明した。さらに走行記録を確認すると、撮影中にかなりの距離を移動していることもわかった。撮影は過酷で、時に長時間にわたってアイドリング状態のまま出番を待っていたこともあったという。



その後、最近まで基本的なメンテナンスしか行なわれていなかったが、今回、試乗してもまったく調子を崩していないことがわかった。クロームのスリムな作りのシフトレバーは、心地よい軽さを伴ってスムーズに1速に入った。ウッドリムのステアリングホイールを握り、峡谷へと向かった。操舵力は適度な手応えを持ち、正確だ。ZF製の5段ギアボックスは、とても扱いやすくスムーズにギアをセレクトできる。

 
坂道の路面は簡易舗装だが、大きくうねる路面では、同行した最新のジャガーXJLよりも快適だと感じた。撮影では荒れた路面を希望していたそうで、800mに渡ってわざわざ表面を削って粗くし、撮影後に完璧な状態に戻したという。だが、結局、ここをDB5が走るシーンは使われなかったそうだ。曲がりくねった細い道では、デリケートなスーパーレジェーラ構造のボディからは軋み音が殆ど聞こえなかった。写真撮影完了後、幹線道路であるA82号線に向かい、スロットルペダルを深く踏み込んでみると、DOHC直列6気筒ユニットは自信ありげに反応し、レヴカウンターが時計回りにぐんぐんと上がっていった。
 

DB5はまさににジェームズ・ボンドだった・・<続く>

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:数賀山 まり Translation:Mari SUGAYAMA Words:Mark Dixon 

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