最も刺激的でバランスの取れたポルシェ911│現代にもおすすめのクラシックモデル

RM Sotheby's

1989年に最初は4WDモデルとして発売されたのがポルシェ911 タイプ964である。3.2カレラの後継モデルに当たるが、ポルシェによれば全体の87%が一新されたという。サスペンションは従来とはまったく別物で、フロントはマクファーソンストラットにロワーウィッシュボーン、リアはセミトレーリングアーム+コイルを採用した。エンジンは250bhpまで強化され、0-60mph=5.5秒、最高速260km/hと性能は素晴らしかった。
 
最初のロードテストではアンダーステアがやや強く、興奮するような車ではないと評価された。クラッチやギアシフトは一般的になり、控えめなパワーステアリングさえ備わっていたが、そのレスポンスは鋭敏とは言えなかった。翌1990年には追加された2WDモデルは高い安定性を備え、これなら4WDは不要とさえ思えたものだ。スロットルオフ時のオーバーステアはもはや問題にはならなかったが、全体的にやはり鈍かった。ポルシェ911には相応しくない言葉である。
 
ここでは限定のスペシャルモデルを取り上げないが、964RSだけは言及する価値がある。1991年に発売されたRSはスパルタンな乗り心地で批判されたが、サーキットでは間違いなくスターだった。1229kgまで軽量化されたうえに260bhpにパワーアップしたエンジンを搭載したRSは、2.7RSの機敏さと現代的レベルのグリップとブレーキを合わせ持っていた。純粋なドライビングマシーンを狙ってエアコンやパワーステアリング、リアシートなどを取り去り、さらに薄いガラスやアルミフード、レカロ製軽量バケットシートが採用された。フロントブレーキはターボと同じでホイールは17インチのマグネシウム、ボディはシーム溶接されている。当然ながら、この特別な911の人気は高く(生産台数は2364台)、中古価格も急上昇、今では最低でも7万ポンドはするはずだ。


 
しかしながら当時の経済状況のせいで964のセールスは落ち込み、日本のコンサルタントが招聘されたという。それは見事に功を奏し、1993年には8292台だった964の生産台数は、993にモデルチェンジした1994年には1万6643台に倍増した。
 
993では再び80%が一新された。斬新で有機的なスタイルと最新のマルチリンク・リアサスペンション、そして272bhpの空冷フラット6を得た新型は素晴らしい出来栄えであり、さらに1995年にはバリオラム吸気システムを採用して285bhpにパワーアップ、セクシーなワイドボディのカレラSも追加された。993カレラS(0-60mph=5.3秒、最高速270km/h)は運転する歓びを与えてくれる。

おそらく最も刺激的で、かつバランスの取れた911と言えるだろう。

編集翻訳:高平高輝 Transcreation: Koki TAKAHIRA Words: Robert Coucher Photographs: John Colley, Porsche archives, Paul Harmer, Rex Features

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