007に登場するアストンマーティンに試乗!│あのボンドカー DB5のスタントカーは?

Aston Martin


 
走り始めてすぐに感じるのは、ボディ剛性がおそろしく高いことと、やや硬めのサスペンションのロードホールディングが優れていること。外観はクラシックでもシャシー性能が最新モデルと同じ水準にあることは明らかだった。ステアリング径が大きいうえにパワーシストまで装備していたので操舵力は決して重くない。それよりもステアリングの作動が正確でレスポンスも良好なことに驚かされた。
 
スタイリングは古いのに走行性能は最先端というのはなんとも不思議な感覚だったが、ギアシフトがスムーズに決まり、ヒール&トーがやりやすいペダル配置だったことも手伝って、だんだん手足感覚でスタントカーを扱えるようになっていった。車重はおそらく1000kgそこそこ、エンジンパワーは300〜400psと推測されたので、スロットルペダルを踏めばそれこそ弾けるように加速を始める。


 
そうこうするうちにペースも次第に上がり、タイトコーナーではそろそろテールが流れ出すかという領域に到達したが、正確に作動するサスペンションのおかげでタイヤがスライドする直前の様子が手に取るようにわかる。さすがに貴重なスタントカー(本作のために8台だけが製作された)とあって本気でドリフトはしなかったが、滑り始めてからもコントロール性が良好であろうことは簡単に予想ができた。
 
映画のなかでこのDB5を操った唯一のスタントドライバーであるマーク・ヒギンズに会場で話を聞くことができた。「完成したスタントカーに注文をつけたことはほとんどないよ。サスペンションを少しアジャストしてドライバビリティを上げたり、ハンドブレーキの利きをよくしてもらったりとか、そんなことさ。サスペンションを極端に硬めていないのは荷重移動を起こしやすくするため。リアデフはもちろんLSD付き。撮影中は何度も同じことを繰り返したけれど、このスタントカーはまったく問題を起こさなかった。素晴らしい仕上がりだね」
 
ヒギンズは、DB5 がマシンガンを撃ち続けながらドーナツターンをする例のシーンに関する裏話も聞かせてくれた。「まず、フロントタイヤを軸にして車を回転できる仕組みを作った。そして運転席にジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグが腰掛けて、スタッフがスタントカーを横から押してグルグル回転させるんだ。ダニエルはこの撮影をうまくこなしたと思うよ」
 
ちなみに、撮影が行われたイタリアのマテラという街は路面のグリップがとにかく低くて苦労したそうだ。そこで撮影舞台はコーラを撒いて路面のμを高めたというから面白い。
 

文:大谷達也 写真:アストンマーティン Words:Tatsuya OTANI Images:Aston Martin

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事