フェラーリの偉大なるスーパーカー!伝説に残るモデルを一気に試乗比較!

Photography:Matthew Howell



長い間、288GTOは私の夢の車だった。ポスターを飾り、宝くじが当たったら買いたいと夢見ていた。今では相当の高額当選でなければ買えないが、初めてドライブした15年前には、まだ私の家より安かった。長年の空想を裏切られはしまいかと私はびくびくしていたけれど、心配は無用だった。あらゆる期待を上回って余りあるほどだったのだ。
 
だから再びステアリングを握る機会を得られてとても嬉しいのだが、先に欠点を片付けておきたい。着座位置が少し高いのだ。これは残念。だが、あとは…。
 
1980年代中頃、世界はまだロープロファイルタイヤとそれを生かすのに必要な硬めのサスペンションに支配されていなかった。したがってGTOも制御の効いたしなやかな乗り心地で、ロールさせながらコーナーに飛び込める。しかし、車の挙動を感じ取らせてくれる真の功労者は、ノンアシストのステアリングだ。フロントが太い225/55 ZR16のタイヤでも、極めて扱いやすく、正確なコントロールができ、感触をたっぷり伝えてくるステアリングがパワーアシストなしで可能であることを、GTOは証明している。また、バンプもくぼみも軽々と受け流すので、パフォーマンスをより長くたっぷりと解き放つことができる。


 
このエンジンからマテラッツィが引き出したエヴォルツィオーネの出力を考えると、GTOの394bhpはおとなしい数字に見える。しかし、感覚的には違う。3000rpmに近づくと、迫り来る嵐のような音がし始める。送り込まれる空気の量が増えるにつれて、その音がエンジンの低い唸りに加わるのだ。そしてターボが作動した途端、GTOはわずかにスクワットして飛び出し、ブーストの波に乗って7000rpmまで駆け上がる。乾いた温かなアスファルトがリアタイヤを受け止めてくれるので、パワーを惜しみなく利用でき、私は病みつきになった。
 
初めて288GTOをドライブしたときは、エンツォも一緒だった。ウェールズにある速度の出るバンピーな道だったので、アンダーボディを路面でこすってしまうエンツォは置き去りにされ、私の中でGTOのヒーローの地位は不動のものとなった。これほど優れた車が、単にエヴォルツィオーネのホモロゲーション取得のために造られたとは信じられない。それが次に試す車である。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:John Barker 

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