ミウラを作った80歳超の天才エンジニアが開発する本物のスポーツカーに試乗!

Photography: Keishi OKUZUMI


 
交差点を曲がるだけで楽しいと思える車である。日を改めて違う個体(こちらには合法4点式シートベルトが備わっていた)を借り出し、ワインディングロードに向かってみた。
 
1つ2つとコーナーをクリアすればたちまち確信にいたる。初心者からエキスパートまで誰もが楽しめるスポーツカーだ、と。ハンドルを動かすたびに、アクセルやブレーキを踏むたびに、なんともいえぬ感動に包まれる。それは機械を操るという根源的な楽しさの現れだ。ちなみに筆者はサーキットでもプロトタイプを試乗した経験がある。いくら自分では速く走っているつもりでもマシンは余裕しゃくしゃくで、まるで路面と一体となったよう。フォーミュラーカーを初めて駆ったときのことを思い出す。
 
実はこのストラダーレ、ロードカーの流儀でサーキットを速く走らせようとしてはいけないのだ。800キロ以上というロードカーにはありえないダウンフォース(リアウィング付き)の発生を上手に使ってコーナーを速く駆け抜けるというレーシングテクニック(もしくはくそ度胸)とたくましい腕力が必要なのだ。ちなみにダラーラでは、そのテクニックの特殊性ゆえ、本社にカスタマーを招き、スクーデリアフェラーリと同じ仕様の超高性能ドライビングシミュレーターも使ってストラダーレを速く走らせる“コツ”を伝授するというプログラムまで用意する。


 
驚くべきことにライドコンフォートと表現できるレベルに収まった乗り心地を実現した。もちろん、ロードカーのなかでは最もスパルタンな部類で硬い板の上に乗る感覚はある。段差を越えるたびに盛大なきしみ音も発する。けれども耐えられないというものではなく、乗り心地の悪いと言われるスポーツセダンやミドシップカーよりは長く乗っていられそうだ。
 
ポルシェやフェラーリの役モノで飽き足らなくなったハードドライビング派に乗ってもらいたい。ライバルを強いて挙げれば英国のBACモノやラディカル、アルティマ、それにロータス3イレブンか。いずれにせよ“サーキットが恋しくなるマシン”であることには違いない。世界一のレーシングカーコンストラクターが造ったマシンだけのことはある。

文:西川淳  写真:奥隅圭之

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事