53年間フロリダの納屋で放置されていたあのメルセデスベンツの名車はどうなった?

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これは、2018年にアメリカのフロリダ州ジャクソンビルで発見されたメルセデスベンツ 300SL ガルウィングの物語である。それは、ある日届いた一通の知らせから始まった。

その知らせとは、"ジャクソンビルのガレージにガルウィングが放置されているのを見つけた"という内容だった。メルセデスベンツの本国クラシック部門であるメルセデスベンツ・クラシックに届いたもので、差出人は生粋の車好きであり、アメリア・コンクール・デレガンスの主催者としても知られるビル・ワーナーであった。

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2018年に発見されるまで53年間にも渡りガレージにしまい込まれていたということだ。1954年にファクトリーから出荷したオリジナルの姿としては、メタリックブルーのボディにライトグレーのインテリアが組み合わされていた。US仕様で、はじめはロサンゼルスにデリバリーされ、そのままマイアミへと渡ったそうだ。ファーストオーナーは、ジャクソンビルで弁護士を行っていたオットー・ボーデンという人物で、ヨーロッパのスポーツカーコレクターとして有名だった。



ボーデンは地元でスポーツカークラブを設立し、まだこのガルウィングが綺麗な姿であった時は様々なレースに参加し車を楽しんでいたという。少ししてから整備士であった人物に譲ったが、いずれにしてもレースで走るために所有していたそうだ。1957年に3番目のオーナーのもとへ渡った。その人物はジャクソンビルでパイロットをしながら、このガルウィングを毎日の相棒として乗りこなしワシントンD.C.からウェスト・ヴァージニアまでの横断旅も行っていたほど。

長旅に出たら、その分メンテナンスをしなければならないことや汚れは増えるものだ。この3人目のオーナーが、リペイントとリフレッシュを行おうと途中までは計画し、リスプレーまではしていたのだが予期せぬことでそのまま手付かずで置き去りに。そして、半世紀の月日が過ぎていってしまったのだ。



動かされないままで過ぎてしまった時間は長いものの、その分オリジナルで残されているパーツばかり。ナンバーマッチングエンジンやギアボックスはもちろんのこと、ホイール、インテリアレザーも残されている。エングルベールのコンペティションタイヤもそのままであった。

メルセデスベンツ・クラシックのチームによって、ドイツ・シュトゥットガルトへとこの姿のまま送られた。メルセデスベンツ・ミュージアムが2台のガルウィングを用意し、並行走行しながらミュージアムを目指した。ベンツのスペシャリストと知られる、メカトロニックのガラス張りトランスポーターに載せられ、その光景はさぞかし印象強いものであったに違いない。



最近の風潮も踏まえると、レストアを施して新車同様の姿に戻したのだろうと考えるであろう。しかし、メルセデスベンツ・クラシックはこれもひとつの歴史であると考え、このままで保存していくことを決めた。大きなイベントにも展示され、ようやく陽の目を浴びる存在として復活することが出来たのだ。

オクタン日本版編集部

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