美しい車の創造と歴史的なカロッツェリアの再興を聞く

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トゥリング・スーパーレッジェラを率いたCEOのピエロ・マンカルディ。その彼に美しい車の創造と歴史的なカロッツェリアの再興について話を聞いた。

アルファ・ミレミリア・スパイダーについて口にした時だった。まるでクリスマスを迎えた子供のように「そう、その通り」とピエロ・マンカルディは身を乗り出して微笑み、表情は文字通りに明るくなった。「あれはまったく信じられないほど素晴らしい車だ!」

「とても優美です」と私は応えた。「そして細部まできわめて丹念に造られている。まるで宝石のようです」。こんな話題なら私自身も浮き浮きしてくる。それからひとしきり私たちは、戦前のトゥリングの傑作であるアルファ2900Bミレミリアについての話が弾んだ。マンカルディが手を組み、自分たちのビジネスの話に戻ったのはだいぶ経ってからだった。

「ご存知のように、トゥリングの"マジック・カクテル" の中身は美しいデザインです。ただし常に高いクオリティが加えられています。2900ミッレミリアはレーシングカーですから、最初のレースで壊れてしまうかもしれない。しかしそれでもどこにも隙がない。彼らはただ純粋に、完璧でない車を工場から送り出したくなかったのです」
 
彼の言葉は企業の経営方針のようにも個人的な信念のようにも聞こえる。ピエロ・マンカルディはキャリアのほとんどを巨大なフィアットの経営陣として過ごし、3年前からトゥリング・スーパーレッジェラのボスとして明確な企業理念を浸透させてきた。ディスコ・ヴォランテは気高い美しさだけでなく機能性や実用性、高いクオリティも併せ持っている、そう私が褒めると、ピエロはまた身を乗り出してきた。

「私たちは価値を付加する立場です。まず自動車メーカーの基準を尊重しなければなりません。元の車の品質を少しでも傷つけるようなことでは意味がない。ブランドを再生させるには信頼を勝ち取るしかないのです」

「カスタマーが私たちのビスポークカーに興味を持つ理由は、他とは違う、個性的な製品ゆえです。そしてその車の製作過程に参加できるということもあります。将来、自動車の歴史に残るかもしれないモデルとともに記憶されるのですから」
 
トゥリングには繁盛しているレストア部門もあり、そこではトゥリング・ボディ以外のクラシックカーの面倒も見るという。実際に今年のヴィラ・デステでクラスウィナーに輝いたフェラーリ・スーパーファスト・プロトタイプはピニンファリーナ製だが彼らがレストアした車だった。さらにデザインチームはいくつかの大学と協力して代替燃料車の開発計画に参加しているという。

「少なくとも実行可能な10のプロジェクトを用意しておかなければならない」とピエロは説明した。「実際に選んで進行させる前にね。ディスコ・ヴォランテのアイディアもそうやって生まれました。私たちはこれまでに4車種を送り出して来ましたから、倉庫の棚の上にはあと40ほどの計画が、ちょうどいいタイミングを待っている。そういうことになりますね」
 
そこで私は、できるだけさりげなく訊ねた。「そのうちのどれか、話してくれますか?」彼の笑顔は再び輝いたが、唇は何も語らなかった。
 
楽しみは、まだこれからだ。

インタビュー:デール・ドリンノン

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