AZIMUT S7 メガヨットと共にマリン文化を築く

Photography:Kazumi OGATA , Yasuda Shipyard

AZIMUTの中でもスポーティなコレクションとなる「S」シリーズ。ラグジュアリーライフスタイルを創造する安田造船所はいち早くS7を導入。その世界観を垣間見る機会を得た。

イタリア アヴィリアーナに本社を置くAZIMUT 。その創業は1969年であり、今年でちょうど50周年を迎えることになる。ファウンダーのパオロ・ビッテッリは当時まだ大学生であったが、セイリングボートのチャーター事業に始まり、やがて小型ボートをベースにラグジュアリー仕様を創る独特の手法で注目を集めていった。そしてビジネスは拡大の一途を辿り、今AZIMUTは世界的なメガヨットブランドとして認められるようになった。50周年を記念すべき本年は2月のドバイに始まり、5月ニューヨーク、9月には仏アンティーブ岬、11月香港、そして12月はトリノのアヴィリアーナの5都市で祭典が開催される。そんな中、AZIMUTを取り扱う安田造船所が「S7」を販売用に輸入したという。


 
AZIMUTにはフライブリッジ、マジェラーノ、アトランティス、グランデ、ヴァ―ヴなど様々なコレクションが用意されているが、このSコレクションはAZIMUTの数あるコレクションの中でも特にスポーティさを打ち出した近代的なデザインが魅力。他のメガヨットとは一線を画すイタリアらしい洗練されたフォルムが美しい。
 
S7は様々な特長を有しているが、まず大事にしたいのはカーボンテックジェネレーションと呼ばれる独特の船体である。カーボンファイバーはその軽さと強度において優れた材質とされているが、S7ではデッキから上部にカーボンファイバーでラミネートしたハイブリッド素材を使用することで、より優れた動的安定性を確立することに成功している。



特にこのS7は"Sportflyバージョン"と呼ばれるフライブリッジ(ルーフ上に操縦席をもつ)仕様であり、腰上の軽さを保つ上では非常に効果的な構造となっているのだ。
 
エンジンはボルボPENTA D13、800mHP(588kw)の3基掛けで、IPS(Inboard Performance System)という推進システムをもつ。これは船体下部に個々に操縦可能なドライブを備えており、騒音や動レベルを最小にしながら、ハンドリングや快適性、低燃費を高いレベルで実現している。また離着岸操作を容易にするジョイスティックなど独自機能を装備している。
 
さて試乗である。時折小雨の降るなか、S7はゆっくりと発進していく。すでに機関系の暖気は十分で安定性を保つジャイロがしっかりと効いており、多少の横波を受けても揺れを感じることがほとんどない。トリプルエンジンは一つのリモコンレバーで操縦が可能。



具体的には左と中の2基、そして右1基を上手にシンクロさせているそうだが、すべての操舵はいたって平和に行うことが可能。キャビンのあるメインデッキではRaymarine社製の統合コントロールパネルにより、エンジンデータ、警報から、排水ポンプ、タンクレベル、機関室の換気、さらにサウンドシステムや空調ユニットに至るまで、すべての制御確認を速やかに行えるのが素晴らしい。巡航中にジャイロ機能を一旦オフにしてみたが、回頭性は一段と高まり、サイズを感じさせないスムーズなターンが行える。安定性を保つもうひとつの装備がオートバランスシステムである。S7の燃料タンクの総容量は3800リッターだが、タンク間でディーゼル燃料を自動的に移送し、要領でバランスが変動するときにヒール角を自動的にゼロ近くにする。ひとクラス大きな船と同等の乗り心地が楽しめるのは嬉しい。
 
さて特筆はやはりセンスの良いインテリアであろう。デザイナーは多くのメガヨットを手掛けるFrancesco Guida。色使いや各スイッチ類など細部の意匠にいたるまで、豪奢だが落ち着きのある丁寧なデザインに仕上がっている。船首部のゲストルームは左右とルーフからの採光があり、広がり感のある明るい印象。また中央のオーナーズルームはさらに広く、右舷側にはオーナー専用の個室シャワーとトイレが備わっているおり、プライベートな遊びの空間として申し分ない。ちなみに船尾にはインフレータブルボートやPWCの格納庫もあり、様々な遊び方にも対応している。


 
寄港時はジョイスティックでの操作。70フィートを感じさせないスムーズな動きで安全に着岸することができた。多くの乗員の助けがなくても比較的楽に操舵が出来るので出航が億劫になることはないだろう。


 
海に囲まれた日本だが、このS7のようなヨットを楽しむラグジュアリー・マリンライフが根付いていない。そこに必要となるのは、メガヨットが自由に停泊できるクオリティ高いファシリティである。安田造船所グループ代表の野澤隆之氏はこう語る。

「地中海には数多くの風光明媚な港があり、豪華なマリンリゾートを味わうことができます。私は日本にもラグジュアリーヨットの文化を醸成するために、たとえばポルトフィーノのような寄港地が必要だと考えています。船の検査などの整理も必須ですし、もっと世界の富豪が遊びに来たくなるようなマリーナを創っていきたいと考えています」
 
S7のような船でマリンライフを始めることができれば、海の世界がもっと楽しくなることは間違いない。なお、S7はその大きさやデザイン、細部の意匠まで、国内の実艇で確認することができる。興味のある方は問い合わせてみては如何だろうか。

Specifications
総全長:70.1ft (21,37 m) 船体の長さ:66.6ft(20,3m)メインセクション幅:17.5 ft(5.3m)
喫水(船の最下面から水面まで):5.7 ft(1.69m)総重量ドラフト 45.4 t(100,089ポンド)
船体建材:カーボンファイバー+GRP 
エクステリアスタイル&コンセプト:Stefano Righini
インテリアデザイナー:Francesco Guida
船体設計:Ausonio Naval Architecture、Azimut Yachts 研究開発部門
定員:12名(フライブリッジ5名) 
エンジン:ボルボPENTA I PS1050 x3基
最高速度:36 kn 
巡航速度:30 kn 
燃料タンク容量:3800リットル(1. 003 US Gal ) 
清水タンク容量:1000リットル(264 US Gal ) 
価格:4億3000万円(税別)

文:オクタン日本版 写真:尾形和美、安田造船所  Words:Octane Japan 

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