フランス流モータースポーツの楽しみ方|2019 Le Mans 24h

2019年6月15日,16日に行われたル・マン24時間レース。フランス西部に位置するル・マン市内のサルト・サーキットを中心に、周辺の公道も使用しての特設コースと会場が整えられる。今年もトヨタ8号車が総合優勝を手にした2018-2019年スーパーシーズンだったが、本レースの週は前半からル・マン市内ではお祭りが始まっていた。今回、私はモデルカーブランド「Spark」に同行し、ル・マンを訪れる機会を得た。



「日本とヨーロッパでは自動車の文化や楽しみ方が異なる。ヨーロッパでは、より文化としてメジャーである」などとは各海外イベントの取材記事でよく目にするが、実際のどうなの本当の雰囲気は、あまり伝わってこない。そこで、たとえば、普段あまり大きく取り上げられないレースの前後の町や人々の様子などをレポートしたら、より実感していただけるのではないかと考えた。今回はその視点で紹介したいと思う。



ル・マン24時間と聞くとレース本番の2日間をイメージする方が多いかもしれないが、現地ではその3日前、練習走行日の日から“お祭り”が始まっている。本レースはフランスのサマータイムに当たる一年で最も日が長い時期に開催される。そのため、朝6時ごろには日が昇り22時ごろまで明るいため、1日がとても長く、有意義に感じられる。私が到着したのは、ちょうど練習走行が行われていた、水曜日の夜23時ごろだった。

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初めてのル・マン会場、初めてのサルト・サーキットを目にしてまず感じたことは、会場の規模だ。サーキットに加えて、普段は市民が使っている公道を封鎖して使用しているため、日本のサーキットイベントとは規模感が違う。



会場を一周りするだけでもかなりの距離となる。広すぎて徒歩での移動が困難なため、関係者はバギーやモーターサイクルを利用していた。観客たちはレンタルサイクルや城内を周るフリーの列車、自身でキックボードなどを用意してくる人など様々。



初日から、キャンプサイトにはかなりの数のキャンピングカーやテントが張られ、既に宴会が始まっていた。バーベキューをする人もいれば、エンジンサウンドをBGMに、昼間からビールを楽しむ人々も見受けられた。



ちなみに会場内では「ル・マン24時間専用カップ」に入ったビールが至る所で販売されている。このカップは返却すると1€が戻ってくるデポジット式となっており、気に入ったらお土産代わりに持ち帰ることも可能だ。



レース前日の金曜日は期間中で唯一、走行がない日。この日、各チームはマシンの最終調整を行い、午後にはドライバー・チームによるパレード"GRANDE PARADE DES PILOTES"に登場する。パレードはジャコバン広場をスタートし、市内1周する特別なコースを一日中周回する。



私は開始1時間前に会場に到着したが、もうすでに沿道には数万人の観客がスタンバイ。開始時間を過ぎると、チームの車に乗ったドライバーが次々とやってきた。
ドライバーやチームメンバーはそれぞれチームごとにチームのリストバンドやお菓子、フリスビー型の柔らかいうちわなど、さまざまなプレゼントを観客に配りながらパレード。





中には熱烈なファンの呼びかけに応えて車から降り、サインや写真撮影などのファンサービスを行うドライバーも多くおり、その度に歓声が上がっていた。
ドライバーたちの他には、一周回る間にヘアーメイクを完成させるユニークなパフォーマンスのパレードカー、サンバ隊や子供達を楽しませるキャラクターカー、子供の運転するクラシックカー風カートの走行なども行われ、観客を飽きさせない。



この日、沿道に駆けつけたファンは年齢や性別もさまざま、幼い少年少女から80歳近いおばあちゃんまで…みんなが一目ドライバーを見ようと、こぞって最前列の場所取りをしていた。その光景は、ヨーロッパでモータースポーツが人々と身近であることを表しているように感じる。



パレードの翌日はいよいよ本レース。来場者の数はさらに多くなり、ヨーロッパの各国から多くのモータースポーツファンが押し寄せる。スタートは現地時間15時。午前中から場所取りで身動きが取れない状況が続くものの、スタートしてしまうと、そこからはゆったりと食事や休憩をとりながら観戦する。





会場内にはいくつもの大型モニターとサーキット観戦スポットがあるので、どこを歩いていても逐一状況をチェックできた。また、専用アプリでも結果を確認することができるので、比較的自由に観戦ができて、とても便利であった。





練習走行日の会場内では、関係のチームのショップにふらっとドライバーが訪れることも少なくない。モデルカーブランドのSparkはル・マンでは3ヶ所のショップを出店。メインのブティックではサポートするドライバーによるサイン会が実施された。この日はロマン・デュマ、ケビン・エストレ、ローレンス・バンスール、ステファン・オルテリなどが時間ごとに分かれて訪れ、会場を沸かせた。



また、Sparkではこの日走行するPorsche 911のProject1仕様を100台限定で販売。このタイミングで実際に走っているレーシングカーのミニカーを商品化しているのは、 驚異のスピード感だ。これも熱意ある作りてである“Spark”だからこそできる 特別なパフォーマンスなのである。



ところで、ル・マンを主催するACO (Automobile Club de L’ouest)が招待するVIPツアーがあることをご存知だろうか。限られた人のみしか参加することができないが、普通は入ることのできない特別なスポットでの観戦スポットツアーを設けている。そんなVIPパスがないと入れないエリアだが、今回“Spark“の協力により、特別に取材を行うことができた。







コースの脇には芝生とのコントラストが美しい白いヨーロピアンテントが設置され、シャンパンやワインを片手に観戦。





現在は一般には封鎖されている、ユノディエールのシケインの正面やインディアナポリスコーナーに、特別なおもてなしのエリアが設営されている。VIPパス所持者のみ、このような特別エリアでの観覧が許されている。





レース本番の夜は人通りもかなり多い。多くのファンが会場のコンテンツを楽しみながら散策する。お店はもちろん、24時間鳴り止まないレーシングカーたちの戦う音。この会場に居る限り、常に興奮が冷めない。24時間走り続けているマシンやドライバーにも疲労がたまり、順位が逆転するかもしれないという緊張感が最高潮に達する終盤の数時間。一番レースにのめり込む事ができる時間帯だ。



レースに集中していると、あっという間に残り数分に。フィニッシュは様々な場所で見ることができるが、おススメはやはりゴールライン。チーム関係者がこぞってピットから乗り出し、ドライバーを出迎える。ゴールラインにいると、その光景が自分もその一員になったかのようで感慨深い。



ほとんどの参加車両がゴールした後は、入賞車両がパレードラン。表彰台の下にマシンが運ばれてくる。ものすごい数の観客たちが表彰会場に押し寄せ、チームとドライバーたちを祝福した。



まさにモータースポーツの祭典と言える、ル・マン24時間レース。もしも観戦に訪れる機会があるなら、ぜひ少し余裕を持って周辺の町やレース前の雰囲気を楽しんでみてほしい。きっと日本ではまだ味わえないヨーロッパだからこその“車文化”を体感できるはずだ。

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