スペインまでオフロードドライブの冒険記 第一弾

Photography: Mark Dixon and Alex Tapley

スペインまでドライブしてオフロードを楽しむ。そんな夢のような週末旅行に誘われたマーク・ディクソンが、自慢のレンジローバーで同好の士と冒険に出掛けた。

少々きまりの悪いことになった。私はV8のレンジローバーで、曲がりくねる山道を無理のない範囲でできる限り飛ばしているつもりだ。前を行くディーゼルターボのディフェンダー110を先頭に、私たちは数台で列を成してスペイン北東部を走っている。ミラーに目をやると、日光を跳ね返す1948年ランドローバーの古いアロイボディがはっきり見える。70年前の車にもかかわらず、車間を維持するだけでなく、むしろ差を詰めてきているのだ。普通なら考えられないことだが、数日後にはこれが当たり前の現実となるのだった。

私たちが目指しているのはランドローバーの70周年記念パーティーだ。開催地はバルセロナからそう遠くない位置にあるレス・コメスで、数百エーカー(1エーカーは約1224坪)にわたって小山や荒れ地が広がる雄大なエステートである。そこで自分と車の腕試しをしようと、ヨーロッパ中からオフロード・エンスージアストが集結する。私の車は、1994年のプレス発表で使われた2代目レンジローバー、通称P38Aだ。



複雑な機構と電気系統のトラブルで悪名高いモデルであり、長旅をするのは数年ぶり、いや数十年ぶりかもしれない。なあに、心配することはないさ…。
 
なにしろ心強い仲間が一緒だ。車種はバラエティ豊かで、前述のシリーズIとディフェンダー110に、ディフェンダー90が4台、ディスカバリー4と1981年レンジローバー・クラシック、そして私のP38である。旅の発案者はランドローバーのマーク・ビーモントとキム・パーマーで、社員数人と会社の友人(私のこと)、そしてそのパートナーを誘って、気軽なロードトリップを楽しもうという企画だ。キムはランドローバーの広報部門を率いているが、メディア向けの正式なイベントではないから広報車は1台もない。参加資格は、忠誠の証しとして、「ソリハル生まれの名車を自腹で購入している」ことだ。
 
キム自身もそれを立派に証明した。2016年に、最後から数えて3番目に生産ラインを離れたディフェンダー90を購入したのだ。魅力的なヘリテージ仕様で、完璧なコンクールコンディションである。それは、ダンズフォールド・コレクションのフィリップ・バショールが乗る90オートバイオグラフィーにも当てはまる。ダンズフォールドは世界的に有名な100台を超えるランドローバーのコレクションだ。今回この車を選んだのは、(比較的)快適で、ディーゼルターボで燃費がよく、エアコンが付いているからだと彼は堂々と認めた。


 
隊列の中でもロブ・スプレイソンの1948年シリーズIは、どこへ行っても熱烈な興奮を巻き起こした。新車でオーストラリアへ渡り、大牧場のオーナーの元を転々とした車だ。その足跡を辿ったロブが奥地の農家で見つけたときも、まだ完全なオリジナルコンディションで、走行距離は2万1800マイル程度だった。その後、エンジンと駆動系を新車当時の仕様に丁寧にリビルドし、1948年当時とまったく同じ走りを取り戻している。それが想像をはるかに超えるレベルであることは、私たちも感じ始めていた。
 
2日前、私たちはサウサンプトンからそれほど遠くない高速道路のサービスエリアで集合した。参加者のほとんどは既に知り合いだが、私とパートナーのポーラ、そして旧友のトニー・オキーフは新顔だ。トニーはジャガーひと筋、勤続40年の男で、今回はポール・ヘガティが所有する鮮やかなタスカンブルーの1981年レンジローバーの助手席に座る。

道中、彼の愛する"ジャガー様"よりランドローバーがいかに優れているかについて、散々からかわれるに違いない。

to be continued...

 

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Mark Dixon

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