伝統と近代的なエンジニアリングの夢のコンビネーションで生まれたポルシェ

Photography: Stuart Collins

993のRSバージョンはRSのすべての利点を備えてはいるが、それはいまだに空冷で、ペダルは依然床から生えているし、不必要な重量はすべてそぎ落とされるといった伝統も健在だった。ドアレリースは、ほとんど重さのないウエッブストラップ(紐)だ。おまけにエンジンは3746㏄に拡大されて6500rpmで300bhp。トップスピードはスーパーカー並みの172mph(277㎞/h)だ。
 
このすばらしいローマイレージ、左ハンドル車のオーナー、マシュー・サイザーはテストデーには欠席だったがドイツのスペシャリストであるトーマス・シュミットと前述のオートファームのジョッシュ・サドラーが使用許可を取ってくれた。シュミットはまたジョン・パウエルと彼の964をジョッシュのために見つけだしてもくれたのだ。
 
パワーステアリング装備のようなモダンなタッチにもかかわらず、993RSはどんなトラディショナルマインドを持った911エンスージアストでも一瞬にして好きにさせてしまう車だった。1996年、私が最初にドイツでこれに乗ったとき、そのまま乗って帰りたいという欲望を禁じえなかったことを覚えている。
 
硬くて軽いスポーツシートは何時間でも快適でいられる。1996年にドニントン・サーキットの周辺で一日中このパッセンジャーライドをやったときも、乗り心地の悪さは一切まるで感じなかった。一言でいえば、993は、特にそのステアリングは、本物のクラシック911の味を持つが、同時にまた誰でもが、それでショッピングにも行くことができる、という車でもある。ギアチェンジと他のメインコントロールは低速での操作が容易で、かつ、本気を出そうとしてみると安定とバランスが卓越していることがすぐにわかる。
 
これは伝統と、それとは相対的に近代的なエンジニアリングの夢のコンビネーションだといえる。またこれは、もっともスタイリングのよい911のひとつだと私は思う。
 
993RSのあらを捜すのは難しいものだが、特にこの新車同然の個体のコンディションはすばらしく見事なものだった。

編集翻訳:小石原 耕作 Transcreation: Kosaku KOISHIHARA Words: Tony Dron 

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