それぞれの個性が輝く4台のポルシェ356

Photography: Paul Harmer


 
年代順で次にくる356は、1959年のコンバーチブルDだ。これは、実質356Aのコンバーチブル版で、スピードスターの対極にあたる。コンバーチブルDのDは、コーチビルダーのドラウツ(Drauz)から来ている。スピードスターが1956年から58年まで続いたのに対し、こちらは1959年のみの製造で、わずか1300台ほどしか作られなかった。そのため、その価値はおよそ12万ポンドだ。幅広のタイヤに履き替えられ、裸のバンパーとリアラゲッジラックはあるものの、決してアウトローなどではなく、スタンダードな356Aの姿を示している。
 


すさまじい速さを見せた先ほどのプリAレーサーと比べると、このコンバーチブルDは穏やかでのんびりした雰囲気をもつ。エンジンをかけると、ツインエグゾーストから聞こえてくるのは、紛れもなくVWビートルの音だ。アイドリングのチャカチャカという音は、優美な見た目と釣り合わないが、エンジンの回転を上げればそれはすぐに収まる。動き出すと、初期のポルシェならではの、滑らかなクラッチやギアシフトの軽さ、指先で操縦できる素晴らしいステアリングがうれしい。ブレーキは大して重要ではない。というのも、穏やかに運転したときにこそ、この車の一番良い感触を味わえるからだ。道を行くと、肝の据わったトルクとおおらかな性格に気づくが、と同時に、1950年代の車だということも強烈に感じる。オーナーはスポーティーなバケットシートを取り付けているが、この車にふさわしいのは、カリフォルニアや南フランスだ。
 
だが、Dに本領を発揮させようとスピードを上げると、ポルシェ本来の気質が輝き出した。持ち味はしなやかなサスペンションであり、少し横揺れもあるが揺れすぎることはない。低回転時のエンジンは、本来のポテンシャルをまったく見せてはいない。それはローエンドのトルクがあるからだが、車重の軽さも手伝って、気付けばすぐに風を切って走っており、1582cc、60bhpをフルに生かしてくれる。ややもすると速度計の針の振れと、伝わってくる穏やかな動きとが矛盾するのだ。あと40bhpあれば、この小さなコンバーチブルが、ジャイアントキラーの仲間入りをすることも可能かもしれない。

編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation: Shiro HORIE 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Robert Coucher 

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