海外向けに少数生産された日産スカイラインの行方

日本は自動車輸出国としての成功を誇りにしているのに、なぜか優れた車ほど海外に出したがらないように見える。トヨタ・スポーツ800やオートザムAZ-1しかり、現在ではホンダS660もそうだ。
 
国外からはまったく手が出せなかった車の最
たるものが、日産C10型スカイラインGT-Rだろう。すっきりとしたラインと、サーキットで並べば強豪メーカーも震え上がる力強いS20型のエンジン音は、まさに名車の名に相応しい。

しかし、1960年代末から70年代初頭にかけて、
世界のエンスージアストはその存在すら知らなかった。まあ、たとえ知っていたとしても、国外に持ち出すことは不可能だっただろう。なにしろ当時は日本人以外で日本語を話せる者は少なかった。
 


しかし一度だけ、われわれヨーロッパに住む
者にもスカイラインを味わうチャンスがあった。日産は1971~72年に海外向けのスカイラインを少数生産したのだ(信頼のおける推測で84台)。それが2400GT(HGLC10)である。このバージョンは、GT-Rほど軽量でもレース向けでもなかったが、そのSOHC6気筒エンジンは国内仕様では2リッターだったが、2400GTでは1970~73 年のフェアレディ240Zと同じ2.4リッター直列6気筒に換装されていた。
 
現存する2400GTの所在は、多くがオラン
ダにあること以外、明らかになっていない。だが、この記事を書いている時点でリスボンのアウトモーヴィスが販売していることは確かだ。この車は1972年に日本からの船を下りて以来、ずっとポルトガルにあり、その乾燥した気候もあって、オリジナルのままの非常によいコンディションだという。


 
レストアが不要だったことからも分かるよう
に走行距離も少ない。オドメーターが示す数字は6万kmだ。したがって6気筒エンジンはまだまだ力を残しているだろうし、新たなオーナーが見つかるまでに時間はかからないだろう。販売価格は3万5000ユーロだかから安いとはいえない。しかし、GT-Rと240Zの価格が徐々に上がりつつある今、それらと親戚関係にあり、しかもどちらよりも希少なモデルが手付かずの状態で入手できるのだから、実に魅力的なオファーだ。日本人が取り戻そうとしても何の不思議もない。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.)Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA

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