オリジナルと改造車のどちらがよいのか?2台のアストンマーティンDB4を実際に走らせて比較

Photography:Matthew Howell



この車は、エンジンがヴァンテージ仕様であることを除けば、スタンダードのDB4に近いものである。もう1台はシリーズ2で、エンジンはDB4GTと同じくウェバーのツイン・チョーク・キャブレター、45DCOEを3基装着し、排気量は4.2リッターに拡大されている。フロントディスクブレーキの4ピストン・キャリパーは必要な時に素晴らしい制動力を発揮する。16インチ径のトゥリノ製ワイヤホイールは路面をしっかりとらえ、高速仕様のリアアクスル・ギアレシオのおかげで巡航速度でも静かである。

この車にはEZ製のパワーステアリングが装備されている。このメーカーの多くの製品と同じく、それは以前のようなパワーの損失が大きい油圧ポンプによる古い方式ではなく、日本製の電気モーターによるシステムを備えている。モーター及び電気系はステアリングコラムに隣接してダッシュボードの下側に配置されており、外からは見えない。また、オリジナルのボディには何も手が加えられていない。

この改造のために、EZはモーターユニットのほか、2点の部品からなる内側のコラムを新たに製作した。それは、モーターユニットのパワーシャフトの両側に取り付けが可能で、オリジナルのラックとステアリングホイールをつないでおり、モーターユニットのマウンティングとともに外側のコラムを構成している。オリジナルの部品には手が加えられていないので、望めば簡単に元に戻すことも可能である。

このシステムは、電動式のパワーステアリングを備えた最近の車と同じく、以下のように作動する。イグニッションがオフの時には、ユニットはパワーを与えられず、ステアリングホイールはリムにちょっと弾力のある動きを感じるが、ホイール自体はまだ作動範囲の中心にとどまっている。この時感じられるのは、モーターユニットのパワーシャフトの入力側の両端の間でのコラムの自由な回転の動きと、ステアリングコラムの内側上部に配置されたトーションスプリングを捻る効果である。スプリングの一方はステアリングホイールのハブにより動かされ、もう一方はパワーシャフトに取り付けられている。


 
パワーシャフトには歯形の加工が施されており、電気モーターで
駆動されるウォームギアによって回転する。点火系に使われているものと似た磁気式のホール効果センサーがステアリングホイールのパワーシャフトへの相対的な動きを感知し、センサーからの信号がモーターに作動を命じるのである。
 
このシステムの効果は、機械的な動きが装置全体に及ぶまでドラ
イバーには分からない。なぜなら、モーターはドライバーの操作を即座に感知して、下側のコラムに回転を与えるためだ。ステアリングの入力を前輪に伝え、そしてステアリングホイールが作動範囲の中心、つまり回転していない状態にトーションスプリングを戻すのである。

この過程は、ドライバーがわずかにステアリングを操作してもその都度繰り返される。いっぽうで、例えばハードなコーナリングにおいてキャスターの動きの増加などから前輪に作用する力が下側のステアリングコラムを回そうとする場合がある。こういう時は、ドライバーの動きに逆らってトーションスプリングに回転を与え、それを補うためにモーターが回転力を発生させる。
 
車のスピードが上がるにつれて、ドライバーは駐車の時よりパワ
ーアシストの量を必要としなくなる。というのは、前輪と路面の間の状況をより感じたいからだ。ステアリングは重くなるが、同時にタイヤのグリップと負荷の変化の度合いを把握することも必要となる。

そこでEZのシステムは、スピードメーターの駆動を利用して、最
近の車でいえばABSセンサーからの信号によく似た磁気パルスを発生する車速センサーを備えている。このパルスとホール効果センサーからのステアリングホイールの動きの情報を併用することで、EZのエンジニアたちは速度の上昇にともなってアシストの量を減らすことに成功した。アシストの量はひとつの曲線で表わされ、設定の変更も可能なので、曲線の形を変えることでユーザーの好みにも
応じられるというものだ。
 
パワーステアリングを備えていない車は通常、低速でハンドルが
重く、高速では軽くなる。いっぽう、パワーステアリングを備えた車の場合、低速でハンドルが軽く、スピードが上がるにつれて、パワーステアリングが備わっていない車のステアリングの重さのグラフ曲線に近づき、同じ値になるまで重くなる。では、これらのアストンマーティンでも同じなのか。それを試してみた。
 

編集翻訳:工藤 勉 Transcreation:Tsutomu KUDOH Words:John Simister 

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事