「運転した中で最も獰猛な車」と伝説のドライバーが語るポルシェとは?

Photography:Ian Dawson



効果的ではあるが図体の大きいインタークーラーユニットを収納するために、ジンガーは量産型911ターボのエンジンカバーの両下端部を改造した。だが、見た目を変えてしまう改造はホモロゲートされた形状に違反すると検査官は指摘するのである。こうして最初の2レースの結果は帳消しにされたが、次のレースのためにジンガーは競争力を保ちながらもレギュレーションに合致する方法を探し出した。重くはなるがコンパクトな水冷式インタークーラーの採用である。これを001と002に載せ、ニュルブルクリンク1000kmに出場させた。これには検査官も文句の付けようがなかった。



しかし、その一方でジンガーは新たな問題の種を投げた。001にとんでもない改造を施したのである。標準モデルではお馴染みのフロッグアイとも呼ばれるヘッドライトを取り払い、ノーズ形状を完全な平面としたのである。強いダウンフォースを得るなど空気力学を向上させることが目的だ。もちろん車のシルエットが大幅に変わっているのは誰の目にも明らかだった。これはポルシェのジョークだろう。新しいノーズを見たほとんどの人がそう思った。

このときジンガーは本当にフェアといえないアドバンテージを得ていた。レギュレーションブックを詳細に見ると幅広のホイールとタイアの装着に関する許容事項がある。それによると完全自由というわけではないが、フェンダーへの改造は許されるとあるのだ。この許容はBMWなど高いボンネットラインを持つフロントエンジン車にとっては利用価値が少ないが、ボンネットが傾斜しているポルシェなどリアエンジン車にとっては何よりのプレゼントであった。だからスラントノーズとなった935はレギュレーションの精神に反していないと見られた。実際、誰も異を唱えることはで
きなかった。

001にとって特別な日は7月のワトキンスグレンでやってきた。ロルフ・シュトムレンとマンフレッド・シュルティがBMWを抑えて1-2-3フィニッシュをやってのけたからである。その勝利はシーズンの得点でもBMWに並ぶところまでポルシェを押し上げた。さらに8月のディジョンでは002が優勝。その結果、チャンピオンシップはポルシェのものとなった。001も3位入賞を果たし、開発の役目とレースでの検証を終えた001は、ここで一線から退くことになる。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:Peter Morgan 

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