奇想天外なアストンマーティン│催眠術にかかるような魅力とは?

Photography:Matthew Howell



ラゴンダは、1986年に再度マイナーチェンジで装いを新た
にした。テールランプはトランクリッド部分からボディ下部へと移設され、リトラクタブルヘッドライトは廃止され、普通にラジエターグリル(実際はトランスミッション・クーラーだったが)の両脇に移動した。計器板はブラウン管をやめ、アウディ・クワトロのような真空蛍光ディスプレイへと変更された。 

車としては確実に進化を遂げたが、ラゴンダが当初持ってい
たラディカルな魅力が薄れていったのもまた事実だった。1990年の生産終了までに645台が生産され、約半数は中東で販売された。超富裕層が多い中東では高級車さえも捨てられるため、何台が現存しているかは定かではない。
 
これからラゴンダ・オーナーになろうとする方々にとっては、
アストンマーティン・ワークスが強い味方になる。かつてのニューポートパグネル工場には歴代モデルのレストアを手掛けるアストンマーティンの子会社があり、どんなトラブルでも解消してくれる。もちろん、ラゴンダのダッシュボードも修理できる。



「2世代目に備えられているブラウン管は高圧電流を使うため
に湿気に弱く、歴代ラゴンダのなかで特に不安定です」と語ってくれたのは、ヘリテージ部門を率いるナイジェル・ウッドワードだ。アストンマーティン・ワークスが顧客に勧めているのは、AM V8に使われているアナログメーターへの交換だ。もちろんブラウン管ダッシュボードは新車時の状態に戻すことも可能だが、そもそも新車時から不安定だったことが最大のネックだという。

「そのほか大容量のバッテリーと大型オルタネーターへの交換は、
配線の多いラゴンダにはお勧めしています。ハードウェアでのトラブルは思いのほか少なく、AM V8との部品互換性は約9割に上るので、さほど心配はいりません」とも語っている。もちろん、この手のレストア作業には金がかかる。ただ、最近のラゴンダ相場の値上がりぶりを見ていると、いずれレストアコストも回収できそうな勢いだ。事実、2015年5月に開かれたボナムズのオークションでは、1984年式の美車が10万ポンドで落札されたほどだ。

ラゴンダが現役だった頃、自動車誌はこぞってロールス・ロイス・シルバースピリットやベントレー・ターボRなどと比較テストを特集したが、アストンマーティンが1位に選ばれることはなかった。だが、現在、シルバースピリットもターボRも10万ポンドでは取引されていない。ウィリアム・タウンズはラゴンダの現状にさぞ満足していることだろう。

編集翻訳:古賀 貴司(自動車王国) Transcreation:Takashi KOGA (carkingdom) Words:Mark Dixon 

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