ひと味もふた味も違う博物館│車、飛行機、機関車、潜水艦に映画館も!

Technik Museum Sinsheim

ホッケンハイムとハイデルベルクの近郊、地平線に飛行機が見えてきたら、それがシュパイヤー技術博物館だ。敷地内には離陸態勢をとったジェット戦闘機や旅客機が点在し、はるか高いところに展示されているものもある。その多くが階段を上って中に入ることができ、マットを持って上れば、らせんシューターで滑り降りることができるようになっている。そう、シュパイヤーはひと味もふた味も違う博物館だ。

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エントランスには様々な展示物があり、ドーム状のIMAX 3Dシアターのチケットも販売している。20×26mの大スクリーンと2万2000ワットのサウンドシステムを備える映画館で、敷地内を2時間も見て回れば、足を休めるのにちょうどいい休憩場所になる。いよいよ博物館の本館に足を踏み入れると、その圧倒的な広さに思わず息を飲む。



飛行機が天井のいたるところからつり下げられて
おり、ライト兄弟のライトフライヤーのレプリカに始まって、2度の世界大戦中のものからジェット時代までを網羅する。最後を飾るのは黄金に輝くカナダ空軍のF86 セイバーだ。巨大な蒸気機関車に、家ほどもある1920年代のディーゼル・エンジン発電機もある。

次には消防車の一大コレクションが並ぶ。その隣の1914年ドラエにはウィンチが付いており、これで監視係を乗せた係留気球を上げて敵の塹壕をのぞき込んだ。近くには、ドイツのエースパイロット、フォン・リヒトホーフェンが乗ったフォッカー製トライプレーンのレプリカが、邪魔な気球を撃ち落とそうと狙っている。



車も豊富で、ヴィンテージのエリアには、マイバッハやメルセデス・ベンツ、ランチア、ロールス・ロイスなどの名車が並ぶ。特に興味深いのが、実験的な1928年オペルRAK2のレプリカだ。運転席の両側には翼が付いており、レバーで操作してダウンフォースを生み出した。この年、フリッツ・フォン・オペルはAVUSサーキットに集まった何千人もの目の前でデモ走行を行った。動力源のロケット24基のうち点火したのは少数だったといわれているが、それでも最高140mphで黒いミサイルのように疾走した。乗り込んでいたフリッツが例のレバーを試す時間もほとんどなかったことだろう。



レース用バイクの中には、1956年にボンネビル・ソルトフラッツで速度記録211mphをたたき出したNSU デルフィンⅢのレプリカもある。その名の通りイルカをヒントにした流線型のカウルが特徴だ。

外に出ると、そこに待つボーイング747の翼の上に出たり、輸送機アントノフAn-22の機内に入ったりできる。この2機は搬入も一大事で、ボーイングは路上を牽引され、巨大なアントノフはわずか1300mの滑走路に降り立った。その大聖堂のような広い機内で結婚式を挙げることもできる。また、ドイツ海軍の潜水艦、1966 年のU-9も、輸送には大変な苦労を伴った。道路と運河を経由してオランダからやってきたのである。

子ども向けの素晴らしい遊園地もあるので、家族旅行にうってつけだ。広いレストランではボリュームたっぷりのドイツ料理が楽しめるし、ミュージアムショップは品揃えが豊富で、分厚いハードカバーの博物館ガイドブックも販売する。ほかにも、自動演奏の楽器や、古い軍服、武器、服や宝飾類のコレクションを展示する別館がある。

シュパイヤーでは誰もが、何かしら楽しめる。おまけにホテルとオートキャンプ場まで完備するのだから、まさに"ヴンダバー(ワンダフル)" な博物館だ。

Words:Neil Godwin-Stubbert

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