ピーター・セラーズがソフィア・ローレンよりも愛した!? フェラーリの最高峰モデルとは

フェラーリ 500 スーパーファスト(Photography: Lies De Mol)



セラーズの情熱
このフェラーリと同じように、セラーズのハートもただ一度スパークが走っただけで激しい情熱に駆り立てられた。ブリット・エクランドをはじめ4人の女性を甘い言葉で口説き落として結婚し、そのほか多くの女性をベッドに誘った。ドジなクルーザー警部にしてはなかなか上出来じゃないか。

だが、アルコールや興奮剤の過剰摂取など、セラーズの不摂生な生活はすでに病に侵されていた彼の心臓に大きな打撃を与え、1980年7月24日、4番目の妻、リン・フレデリックと2番目の妻、ブリット・エクランドに見守られながら、ロンドンの病院で息を引き取った。わずか54歳だった。

セラーズの言葉遣いや異常なかんしゃく(鬱の発作も要因だった)によって、ひどく傷つけられた人がいる一方、懐かしく思い出す人もいる。現在、リチャード・ウィリアムズはアストンマーティンのスペシャリストとして知られているが、1960年代当時、彼はアストンの見習いにすぎず、セラーズに彼のカーコレクションの管理を任されていた。

「ピーターは他の人には冷酷だったかもしれませんが、私には一度もそういった態度をとったことはありません。彼にとってかけがえのないものを任されていましたからね。車が彼を上機嫌にさせていたのです」

ウィリアムズが言葉を続ける。「ブリットのための黄色のマセラティ・ギブリや主に彼自身が使っていたロータス・エランを含め、100台以上の車を持っていました。ほとんどの車は数週間後には売ってしまいましたが、スーパーファストは別です。彼は3年もの間この車を手放しませんでした。ただ、一番のお気に入りだったわけではありません。奇妙なことに私たちが『オールド・ミン』と呼んでいた1930年代のオースティンを何よりも気に入っていました」

にもかかわらず、セラーズは突如そのオースティンを親友であるスパイク・ミリガンに譲った。しかし、ミリガンが雨の中に車を放置し、ラジエターのゲージをコーヒーパーコレータに交換したことがわかると烈火のごとく怒り、すぐに取り返した。

現在「オールド・ミン」はウィリアムズが所有し、これ以上ないほど大切にされている。彼はかつてセラーズがジュネーヴに引っ越すことを決めた際、セラーズのフェラーリの一台をジュネーヴまで走らせたというが、残念なことに、それがどのフェラーリだったのか思い出せないと言ってほほ笑んだ。

しかし、それは275 GTBだったに違いないと思う。ヨーロッパ有数の美しい道路を巨大なスーパーファストがうなりを上げて走る光景を忘れるはずはない。たとえ助手席にブリット・エクランドがいなくても。


フェラーリ 500 スーパーファスト
エンジン形式エンジン:4962cc V12、SOHC、ウェバー製40 DCZ/6キャブレター×3基
最高出力:394bhp/6500rpm 最大トルク:48.5kgm/4750rpm
トランスミッション:5段MT、後輪駆動 ステアリング:ウォーム&セクター
サスペンション(前):ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、
テレスコピックダンパー、スタビライザー
サスペンション(後):リジッドアクスル、ラジアスアーム、半楕円リーフスプリング
ブレーキ:ディスク 車重:1397kg
最高速度:170mph(約274kmh)0-100km/h6.0秒

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:渡辺千香子(CK Transcreations Ltd.) Translation: Chikako WATANABE (CK Transcreations Ltd.) Words:Bart Lenaerts Photography: Lies De Mol 取材協力:クーン・ポシェット(www.albionmotorcars.com)

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