レンタカーだったモンスターマシン │「レンタ・レーサー」キャンペーンとは?

RM Sotheby's

このシェルビー・マスタングGT350 H以上にアメリカ的なものはちょっと思いつかない。1960年代中頃にレンタカー大手のハーツが"レンタ・レーサー"キャンペーンを行い、これはそのために造られた特別仕様のGT350なのだ。

1966年には、25歳以上で運転免許があれば誰でも当時最高のコンペティションカーをレンタルできた。しかも、20ドル札でお釣りがくる値段で1日使えたのである。正確なレンタル料金は地域によって違った。安いところで1日13ドル、高くても1日17ドル(走行距離によって追加料金あり)。一家に一台モンスター・マッスルカーを、これぞまさにアメリカンドリームだ。

顧客に売り込む必要はなかったが、結局この大胆な企画はハーツにとって高く付いた。1001台製造されたGT350 Hは、当然といえば当然ながら、ずいぶんくたびれた状態で戻ってくることが多かったのだ。また、レースミーティングなどに持っていって、コブラ289 V8エンジンを自前の車に載せて使い、レース後に急いで元に戻して返却するといった輩もいたと思われる。

レンタカーを卒業した後、GT350Hの多くはサーキットに活躍の場を得た。このシャシーナンバーSFM 6S564もそうした1台だ。昨年からは、テキサスのビジネスマン、サム・パックが所有する膨大なコレクションの仲間入りをしていたが、11月15日にパック所有の一流のアメリカンマシン130台とともにオークションにかけられた。その中には、1967年シェルビー・コブラ427や、1920年代までさかのぼるフォードの各モデル一揃いなども含まれていた。

いったい誰が元レンタカーなんかを欲しがる?そう思う人もいるだろうが、「レースをする者なら誰でも」というのがその答えだ。ただし、落札価格は11万ドル、である。パック氏がこのSFM 6S564に惹き付けられたのも無理はない。

念入りな改造を施されており、295ciのフォ
ードV8エンジンを搭載し、BLP製750cfmウィンストンカップ・キャブレターに、カスタム仕様のエーデルブロック製ビクター・インテークマニフォールド、ジェリコ製レース仕様トランスミッションを装備。これで572bhpという驚異的な出力を誇る。標準のGT350に対し266bhpものパワーアップだ。もし新オーナーがこれを1日13ドルで貸し出す(もちろん走行距離によって追加料金あり)と言ったら驚愕するだろうが、真っ先に列に並ぶことは間違いない。

編集翻訳:オクタン日本版編集部 Transcreation: Octane Japan 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Compiled: Chris Bietzk

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