このレーシングカーは一般道で実用的だ|ある「ローラT70 Mk.III」オーナーの証言

1967年ローラT70 Mk.III(Photography:Justin Leighton)

一般道で使うための普通とはちょっと違った車を探し求めたあげく、キース・ニューカムはローラT70を買った。そう、それは本物のレーシングカーである。

この車の真の実力を路上で思い切り試すわけにはいかない。ラウンドアバウトや交差点に差し掛かると、誰もが止まって先を譲ってくれる。まだ暖まっていない間、ゆっくり走っている間は他の車が近づいてくるが、一旦暖まれば、排気管から吹きだす炎が皆を遠ざける。だが、あまり"お世話になりたくない車両"を近づけないためにも、右足に力入れすぎないようにしないとね。私は時々、マクラーレンのヘッドクォーターの前を通るんだが、ラウンドアバウトでちょっと吹かすと、スタッフが皆手をたたいて声援を送ってくれるんだ」

本物のレースカーを路上に
キース・ニューカムは自身のローラT70 Mk.IIIについてこう語った。彼が一般道で乗っているのは本物のT70である。これまでにも何台か、公道用に登録されたT70があったが、キースがそれを決意するまで、公道走行可能な真のローラT70は存在しなかった。2台所有していたACコブラのことをダックス製キットカーではないのかと尋ねられることに辟易した彼は、その両方を売却してローラT70を手に入れた。正確に言うとT70を4台買ったのである。

「とてつもなくパワフルで美しく、ついでに誰も"これはキットカーなのかい?"と質問する余地のない車が欲しかった」と彼は説明する。「それも、皆がそれを知ったら口をポカンと開けるような、ちょっと変わったものが欲しかった。最初はGT40も考えたが、それだとコブラの時と同じ状況になる可能性があった。初めからロードカーとして使うことを考えて、GT40の兄弟車であるT70に行きついたんだ。とても美しいマシンだ」

「スパイダーをまず手に入れたのは12年ぐらい前だと思う。もう一台を8年前に買った。しかし天気が悪くても仕事に出かけるためにはやはりクーペが必要だということに気づいた。そこでクーペを9年前に買い、そして5年前に最後の一台、レッドローズレーシングのスパイダーを買った。ちょっと病気みたいに聞こえるかもしれないが、単にこらえきれなかったんだ」

「このクーペは、もともとスラウの工場からスパイダーMk.IIIシャシー(SL73/103)として出荷されたものだ。米国ダラスのローラ・インポーター、ジョン・ミーカムが購入し、米国のレースで活躍した。1967年4月にはウッディ・ヤングがラスベガスGPで3位に入り、68年6月のポートランドでのローズ・カップ・レースでは2位入賞。翌69年2月にはリバーサイドで優勝、シアーズポイントで2位に入った車だ」

「1989年ごろにアメリカでフルレストアされ、8年ほど前にクーペボディに作り変えられたという。だが作業のレベルは私が期待するほどではなく、私のメカニックであるミック・エバンスとともに、いちからやり直すことにしたんだ。完成してペイントした時にナンバー3をつけることにした。Mk.IIIの3台目だからね」

編集翻訳:高平高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA Words:Ivan Ostroff Photography:Justin Leighton

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