エンツォ・フェラーリ最後のスーパーカー F40を分析する

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「F40 を買いたい人は、まず妥協を学ばなければなりません」こう話すのは、フェラーリのスペシャリスト、DKエンジニアリングのジェームズ・コッティンガムだ。「誰もが走行距離の少ない車を望みます。触媒コンバーターも車高調整機能もない初期型で、走行距離が少なく、窓がスライド式なら理想的でしょう。ただ、そんな車が存在したら200万ポンドはします」

まず、F40のバラエティーを確認しよう。最もハードコアな顧客のために生み出されたF40だが、1987~92 年の製造期間に様々な進化を遂げた。製造は1311台で、そのうち600台がアメリカ仕様。これはすべて触媒コンバーター付きで、バンパープロテクターが多い分重く、インテリアもわずかに異なり、車高調整機能も付いている。

残る700台がヨーロッパ仕様だ。最初の350台ほどがフェラーリのレースショップで製造され、軽量でパワフル。コレクターが"最も純粋" と考える車である。ポリカーボネート製の窓が巻き上げ式ではなく、スライド式の小窓が付いたタイプなのは最初の50台だけ、という俗説は間違いで、ずっとオプションにあった。ただ、初期型に多いのは確かだ。

予定の400台を超えて製造することが決まてからは、通常の製造ラインで造られた。そうした車は、エンジンベイに組立番号が入っており、組立品質もよい傾向がある。約半数に、油圧でバンプクリアランスを変える車高調整機能が付いているが、DKエンジニアリングでは、この機能を何台も取り外したという。アンチロールバーの位置を基準に作動するため、凹凸が多いと高速走行中に車高が上がってしまう可能性もあるのだ。触媒コンバーターが加わったのは1990年である。

選ぶ際の着目点を聞いた。ペイントの下にカーボンファイバーの織り目が見えない車は再塗装を受けているというのも俗説にすぎないとコッティンガムは話す。「初期の車で織り目が見えないものを見たことがあります。苦情が寄せられたため、ファクトリーを出る前に塗装し直したのでしょう。手作業で造られ、手作業で塗装された車ですから、1台1台が異なるのです」

Cピラーにひびの入った車もあるが、見ればすぐに分かる。インテリアに関しては、独特のシートの素材が汚れ、ウレタンが劣化している場合がある。同じ素材は再生産されており、DKではおよそ3000ポンドで再トリミングを行っている。

走らなくても維持費がかかる点はすべてのF40に共通する。必要不可欠な作業が済んでいるか、記録を確認したい。エンジンはツインターボの2936ccティーポF120(触媒コンバーターなしはA 、ありはD が付く)で、最高出力は7000rpmで478bhp 。1万8000マイルか3 年ごとにタイミングベルトの交換を要する。エンジンを降ろす必要がないため作業はやりやすく、フェラーリでは946ポンドで行っている。排気管から煙が出るのは、たいていターボの劣化が原因だ。オーバーホールは比較的安くできる。

燃料タンクは樹脂製で保証期間は5年だが、DKでは10年で交換している。コッティンガムによれば、いまだにオリジナルのままの車もあるという。DK の価格は1200ポンド。クラッチは約3000ポンドだ。

時間とともに、他の問題も発生する。クラッチのスレーブシリンダーを収めたマグネシウム製のベルハウジングは浸透性を帯びることがあり、そうなるとクラッチをダメにする。これはステンレス製のスリーブを入れれば解決できる。ホイールリムから空気が漏れることもあるが、修理は難しい。

過去の記録で整備の間隔があいていても気にする必要はないとコッティンガムは話す。長い間しまい込まれている車も多いからだ。「ですが、最近の履歴は重要です。私は、レース用ハーネスではなく、純正シートベルトのままの車を見るとワクワクするんです。激しく使い込まれていない証拠ですからね」

[注意点]

・フェラーリは2009年から、すべての車種を対象に「With You」というロードアシスタントサービスをヨーロッパで展開している。トラブル発生の際に自宅か近隣のサービスセンターまでの費用をカバーするものだ。また、生産が終了したモデルについてもメカニックへの研修を行っているので、正規のワークショップであればどこでもF40を扱えるはずだ。

・コッティンガムは、古い燃料で走らないようにと念を押す。「現代の燃料の品質保証期間は6週間ほどですから、長期間にわたって満タンで放置してはいけません。私たちが目にするダメージは、ほとんどが古い燃料で酷使したために起きています。バルブシートを焼いてしまったら、シリンダーヘッドも修理したほうがよいでしょう。すると費用は2万5000ポンドに跳ね上がってしまいます」

・走行後はターボが冷えてからエンジンを切る必要がある。しかし、冷えた状態からの長
いアイドリングは禁物だ。すぐに走り出したほうがいい。火災も耳にするので、消化器を組み込んでおくのもいい考えだ。

・ウィッシュボーンを交換するリコールがあったが、のちにアップデートされている。1度
目の交換は受けても2度目は受けていない車が多い。フェラーリディーラーに相談してみよう。リコールは今も有効だから、アップデートは無料で受けられる。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA

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