「卵」の愛称で呼ばれた先進的なフェラーリ|166MMがこの形になった理由

1950年フェラーリ166MM/212エクスポート Uovo フォンタナ製ボディ(Photography:Remi Dargegen)



その頃には私もリラックスしてきて、車がドライバーの意思に敏感に反応していることがわかるようになってきた。軽いことが鍵なのだろう、その反応は10歳若いフェラーリであるかのように敏感で、ドライバーはいっときも気が抜けない。ステアリングホイールは常に2本の腕で支えていなければならず、腕には自然と力が入る。集中力は常時必要で、こうと思ったらさっと反応しないと車に負けてしまう。スポーツというより格闘だ。ためらいは許されない。ドーム状のプレキシガラスの下はとにかく暑い。そんな環境でマルゾットが1000マイルもの長距離をドライブできたのかは神のみぞ知るところだが、私も汗びっしょりになった。ジャンニーノがレース中にフロント2枚重ねのジャケットを着用してステアリングを握ったというのは有名な話だが、そんなのは一度きりだったのではないかと、このとき思った。

ひどい渋滞に遭遇しなかったのは何よりだったが、そもそもフラットアウトで走ることを前提に設計されたはずである。にもかかわらず、エンジンは低速域でも扱いやすかったことは記しておこう。

そうこうしているうちに車を返却する時間がやってきた。少しでも長くドライブできるようできる限り遠回りをして帰った。スイッチを切ると突然の静寂があたりを包む。だがそれも束の間、金属が冷めるときのカンカンした音が静寂を打ち破る。この車をドライブするのは麻薬のようなものだ。資金があったら買いたいなと心底思った。

ウォーヴォは完璧にレストアされた車ではない。しかしそこには誇り高い歴史がある。機会があればまた乗せてもらいたいものだ。新しいオーナーがコ・ドライバーを必要としたときは、ぜひ私に声をかけてほしい。そのときが来るのを首を長くして待ちたいと思う。

1950年フェラーリ166MM/212エクスポート Uovo フォンタナ製ボディ
エンジン:V型12気筒、2563cc、SOHC、ウェバー32 DCFキャブレター×3基
最高出力:150bhp/6500rpm(オリジナル時)
トランスミッション:5段MT、後輪駆動 ステアリング:ウォーム&セクター
サスペンション(前):ダブルウィッシュボーン、横置きリーフスプリング、油圧ダンパー
サスペンション(後):固定軸、半楕円リーフスプリング、油圧ダンパー、スタビライザー
ブレーキ:ドラム 重量:800kg 最高速度:138mph(約222km/h)

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:Massimo Delbo Photography:Remi Dargegen 取材協力:RMサザビーズ(www.rmsothebys.com)

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事