「卵」の愛称で呼ばれた先進的なフェラーリ|166MMがこの形になった理由

1950年フェラーリ166MM/212エクスポート Uovo フォンタナ製ボディ(Photography:Remi Dargegen)



価値ある勝利
1950年のミッレ・ミリアはジャンニーノが自身のフェラーリ195Sを駆って見事優勝したが、それでもフェラーリの空力性能と重い車重には不満を持っていた。しかし、エンツォはその指摘を快く思わなかった。そこでジャンニーノは熟練工業デザイナーであるフランコ・レッジアーニに彼の希望を満たすオープンボディを作ってくれるよう依頼した。これは未来のレーシングカーにつながる第一歩なのだというひと言を付け加えて。芸術的な側面も持つフランコはこの注文を快く引き受けた。そして、出来上がったものは期待以上のものだった。カロッツェリア・フォンタナで製作されたクーペボディは新しいだけでなく、誰が見てもユニークなもので、その軽さたるやオープンタイプの当時の基準となっていたカロッツェリア・トゥーリング製のオープンカーより100kg以上軽かったのだ。

車は1951年3月に完成、その前衛的な卵形のシェイプから"Uovo(ウォーヴォ:イタリア語で卵のこと)"の愛称が付いた。車にはAピラーがなく、その代わりにスチール製のケーブルがウィンドシールドを支持する。構成パーツはグラム単位の軽量化が図られたが、最終的な出来上がりは完璧とは言いがたかった。フロント・スクリーン周辺は左右非対称だったし、ボンネットの上に開けられたエアインテークもショーカーならまだしも、レースのために造られたプロトタイプとしては中途半端な大きさだったからだ。

ジャンニーノはその月の終わりにマラネロを訪れ、エンツォに完成した車を披露した。エンツォは機嫌が悪くなるどころか、いつになくこの改造車に興味を抱いている様子だった。車は4月1日にレースに復帰、ジーロ・ディ・シチリアに435番のナンバーを付け、ジャンニーノ・マルゾットの操縦で参加した。ここではピニオン・ギアの破損でまたしてもリタイアと相成ったが、一時はピエロ・タルフィがドライブするフェラーリ212を抑えてレースをリードするほどの速さを見せた。

ペレルマンでハンドメイドされたボディはまだ塗装もなく、フォンタナ/レッジアーニの共同製作になるフロントグリルもようやく間に合ったという状態。なぜこんな苦労を強いられたかといえば、フェラーリが裾の広がったラジエターを供給できなかったからである。マルゾットはレース後に、テール部分はリアホイールを覆うのに充分な大きさでないので改造の余地あり、室内の換気に関してもルーフにエアインテークを2個付けてほしいと改善要求を出している。

その月の終わりに車は1951年のミッレ・ミリアに備えてブレシアに運ばれた。車は2トーンに塗られ、ピレリ5.90×15タイヤを履き、新しいフロントグリルとリアウィンドウにはよろい窓を仕込んだプレキシグラスがはめ込まれていた。

車は調子よく走った。少なくともペスカラまでは。実はそこでリタイアしたのだ。今度は新しいタイヤが原因だった。気泡が右リアに発生してしまったのだった。

ウォーヴォは1951年5月にフェラーリに戻された。エンジンは3連のキャブレターを装備するナンバー0086Eに載せ換えられ、今度こそよい成績が期待された。6月、ジャンニーノ・マルゾットはマルコ・クロサラと組んでコッパ・デラ・トスカーナでついに勝ち名乗りを上げた。次に出場したサーキット・インターナショナル・ド・ポルトでは2位だった。7月に再びマラネロ入りしエンジンナンバー0012Iに換装。いくつかのレースを見送ってまで載せ換えを敢行した最大の目的は、1952年のミッレ・ミリアとペスカラ12時間で好成績を収めることだった。しかし、別のドライバーと組んで出たこのふたつのレースはどちらも完走できなかった。

1953年初頭の寒い季節を車はマラネロで過ごした。エンジンの完全オーバーホールを受けるためである。4月のミッレ・ミリアで戦える状態にするのが目的だった。しかし土壇場になって、フェラーリはジャンニーノ・マルゾットに対して4.1リッターのワークスカー、340MMヴィニャーレを提供した。彼はこれで見事な勝利を収め、2勝目を挙げた。序盤はフアン・マニュエル・ファンジオと争いつつレースをリードしたものの、のちにオイル交換に失敗し、二度の小さな事故に巻き込まれたにもかかわらず得た勝利であった。

編集翻訳:尾澤英彦 Transcreation:Hidehiko OZAWA Words:Massimo Delbo Photography:Remi Dargegen 取材協力:RMサザビーズ(www.rmsothebys.com)

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