ジャガー創立者 ウィリアム・ライオンズ卿のために生産された「ジャガー Mk.X」

1961年ジャガー Mk.X(Photography:Amy Shore)



ライオンズ卿の元を離れてから
本来の、ジャガーの最重要人物を運ぶという使命を全うした後、7868RWはコッツウォルドのはずれの、チェルトナムにあるジャガーのメインディーラーに置かれていた。1966年にこれを購入した人物は2011年に亡くなるまで所有したが、最後にはテールを納屋から突き出したままの状態で放置されていた。その後、ケント州カンタベリーの男性がこれを買い、持ち帰った後にレストア費用の見積もりを取ってみて仰天した。ここでイアン・バーグの登場となる。彼が営むコンプリート・クラシックカー・ソリューション社は、ジャガーを中心としたクラシックカーのレンタル業および販売を手がけている。

イアンは7868RWを手に入れた時の様子をこう語っている。「2014年に入手した時はちょっと惨めなコンディションだった。塗装はたった一回のニトロモル剥離材処理でボディから剥がれ落ち、まるでニワトリ小屋の中のようだった。だが、年代と保存状況から考えれば、むしろよい状態だったと思う。おそらく余計に重ねられたペイント層のお陰なのだろう。下側の状態も良好だった。だがトランク、フェンダー、インナーとアウターシル、ドア等はすべて錆びがひどかった」

つまり、ほとんどボディ全体がだめだったということではないのか。レストア作業はそれぞれのスペシャリストに委ねられた。ウエストヨークシャーのハダースフィールドにあるクラシックジャガーのスペシャリスト、マイルズ・クラシック社がボディリノベーションを施して、見事なオープラセントグリーンで完成させた。ウエストミッドランドのニューカッスル・アンダー・ライムにあるジャガーパーツのスペシャリスト、XJK社がすべての機械部品をリフレッシュし、張り直されたベージュの内装や再仕上げされたウォールナットパネルとともに再度組み立てた。

風雨に晒されていたリアライトユニットとリアのナンバープレートサラウンドはレストアできる状態にはほど遠かったが、イアンはNOSの新品パーツを探し出した。他の光り物は必要に応じて再メッキされたが、特にバンパーのオーバーライダーは、完璧なレストレーションを目指す車のパーツであることから、組付け後には隠れてしまう部分に至るまで完璧に仕上げられた。レストア完成後、7868RWは最後の仕上げと、サティフィケイト発行のためにブラウンズレーンの本社内にあるジャガーヘリテージトラストに持ち込まれた。

「かつてこのMk.Xがストライキの職場放棄をブロックした場所、当時のブラウンズレーンのメインエントランスは既に長い間使われておらず、そこをこれで通り抜ける事はできなかったが、7868RWをブラウンズレーンに戻すという事自体に興奮したよ」とイアンはいう。

編集翻訳:小石原耕作 Transcreation:Kosaku KOISHIHARA Words:John Simister Photography:Amy Shore

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