レアなコンバーチブルのBMWを購入│その魅力とは?

Photography: Sanjay Seetanah

果たして、ミッドライフ・クライシスは何度も体験できるものなのだろうか?数年前、私はアストンのDB7を最大限に楽しんでいたが、グレン・ワディントンがBMWのE30 320iを購入したとき、自分が思っていたよりも、それをうらやましく思ってしまった。E30は以前に何台も何年も所有していたこともあり(走行距離24万マイル(約39万キロ)超えのものもあった)、相変わらずこの車には目がないのだ。

でも最近は、E21の方に興味が移っていた。以前からシャークノーズのBMWは大好きだった。走行距離5万マイル(約8万キロ)のE21バウアーが売りに出たときにはかなり心を引かれたが、その1.5万ポンド(約233万円)という価格にはただただ納得できなかった。それが、おそらく最高かつ最もオリジナルな状態を保っている個体であろうとも。交渉は決裂し、購入はあきらめた。すると翌週に、1981年式の323i トップカブリオ(E21 TC1)がイーベイに出品されたのだ。

バウアー社は、長年BMWのコンバーチブルを造り続けていて、しかもどこのBMWのディーラーからも保証付きの完璧なバウアー・カブリオをオーダーできた。後継のE30の登場で1982年にE21が生産中止となったときでも、バウアー・カブリオ(TC2)バージョンはオーダーできた。その後もTC2の需要は高く、とうとうBMWは4年後に自社でファクトリー・コンバーチブルの製造を開始した。それでも、1992年までバウアー・トップ・カブリオは販売が続けられた。



このバウアーは、アームストロング・シドレー・ヘリテージ・トラスト社の会長が所有していたものだ。彼は引退したカーメカニックで、2001年にこの車を購入してから3年間乗り、その後は車庫にしまい込んでいたという。カラーリングはヘナ・レッド、ギアボックスはドッグレッグ(パターン)でクロスレシオの5段マニュアル、走行距離は新車時から10.6万マイル(約17万キロ)、トップレンジのモデルだ。しかも、なんとうちからたったの20マイル(約32キロ)のところにあるという!これはもう見に行くしかなかった。

この車にメカニカルな問題はなく、4月からは再び走り始めていて車検も軽く通っている。サスペンションのブッシュは全て交換済み、OEMだが新品のマフラーも付いていた。ただ、こういった車はサビが問題になることがある。オリジナルのペイントの多くの場所にシミの様なものがあったが、どれも大したものではない(と思いたい)。

再塗装すれば問題ないことなのだが、きれいに磨いたところ、それでも何年か頑張ればとても素晴らしい車になりそうな気がしてきた。エンジンは少々かったるい感じで、チューンナップを施したい。とはいえKジェトロニックの機械式燃料噴射システムは、整備が困難なことで有名だ。ダンパーもヘタっており、ボンネットには数カ所に亀裂がある。新品の部品は800ポンド(約12万円)程度だが、自分でリペアできるかもしれない。この車を生き返らせるという使命のためにも、購入することにした。
 
ポール・ブラックによるデザインを纏った70年代初期のモデルは、とてもよく走るうえに快適だ。323iは143馬力の一番パワフルなバージョンで、いつもついアクセルを強く踏み込んでしまう。

E21は、ますますレアになってきている。運転免許庁の発表によると、イギリスに存在するバウアーはたったの48台(323iは19台)で、更に112 台が一時抹消登録済だ。E21バウアーは4595台も製造されていることから、これには驚いた。そういうわけで、私はこの車をまともに満足できるレベルにまで仕上げ、次の35年間も使えるようにしようと思うのである。

Words: Sanjay Seetanah  訳:オクタン日本版編集部

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