程度最悪のアストンマーティン DB5が買いである理由

octane UK

状態のよいDB6でも、レストアには高額な費用がかかる。これを予算に組み入れるべきだとスペシャリストは警告する。

アストンマーティン・ワークスのヘリテージワークショップ・マネージャーでるナイジェル・ウッドワードは、「DB6は50 年も前の車ですから、レストアされたばかりのものや、非常によく手入れされていたもの以外はレストアが必要になります」と、DB6の購入を考えている人々に警告している。
 
構造は基本的にDB4やDB5と同じで、鋼板製プラットフォームシャシー上に構築した鋼管フレームに、アルミニウム製ボディパネルを被せている。鋼板のプラットフォームをはじめとして、どのパーツも錆びやすいものばかりだ。最終的にレストアの費用はDB4/DB5と同等だ。スペシャリストの「デズモンド・J・スメイル」の料金は、20~25万ポンド+VAT(付加価値税)、アストンで"ボディオフ・レストア"を依頼した場合には、35万ポンド+VATが請求されるだろう。

「DB6 に25~30 万ポンド払ったとしても、完全にレストアするには、最低でもさらに20万ポンドが必要となります。それなら最悪のコンディションで13万ポンドの車を購入すればよいのです。レストア後の価格は、状態のよいものをレストアした車と変わりません。投資の回収にはしばらく時間が必要ですが、価値は上がり続けていますから、最終的には回収できますよ。DB5を見てください。最高の状態の車には、100万ポンド近い値がつけられています」とはデズモンド・スメイルのアドバイスだ。

その車のヒストリーを裏付ける書類がそろっているものは価値が高い。あとはボディがすべてだ。レストアされている車でも慎重なチェックを必要とする。「ドアがしっかりと閉まらない場合は、何か不具合があります。特にシャシーに手直しが多い場合は注意が必要ですね。それから事故による破損の跡がないかを確認します。長い間、雑な修理が行われてきました。90年代後半ですらそうだったのです。莫大な費用をかけて車の外観を完璧にしなくても、オークションではあまりわかりませんからね。しかし専門家の目はラインがしっかり合ってなかったり、グリルがしっかりはまっていなかったりといった問題を見逃すことはありません」

「ですから調査を依頼するようお勧めします。全体調査には600~700ポンドほど必要になりますが、自分が購入する車を事前に確認することができます。現在、私のワークショップには燃料系に間違ったホースが取り付けられたDB6ヴァンテージが入庫しています。エンジンルームの温度が上昇すると、そのホースが軟らかくなり、ガソリンが漏れ出します。正しい部品に関する知識が必要なのです」

さらにウッドワードは「機械的な面では、DB6は一般的に頑強です。エンジンに関しては、シリンダーブロックとシリンダーヘッドからのオイルやクーラント漏れをチェックしてください。Mk1モデルには、多くの人がワイドなホイールに"205タイヤ"を履かせています。

ジャッキアップしたときは自在に回転しているように見えるかもしれませんが、負荷がかかったときやコーナリング時には、リアのバンプストッパーブラケットに干渉します。ハンドリングにも悪影響を及ぼしますし、見た目もよくありません。そのため私たちは、完璧にマッチするオリジナルのホイールとタイヤを取り付けるように勧めています」

一番いいスペックはマニュアルギアボックスだ。この頃のオートマチックは、60年代後半ですら不完全でパワーが出ず、なにしろ重い。ナイジェルによれば、マニュアルのギアボックスは入手が難しいため、もしAT仕様をMTに変更しようと考えているなら注意が必要だ。

より太いホイールとタイヤ、そしてフレアしたホイールアーチを持つMk2や、ヴァンテージ仕様エンジンも好まれる。一般的なDB6の多くは「ヴァンテージ仕様」に変更されているが、正規でないカムシャフトと、純正のイタリア製ではなく、最近のスペイン製ウェバー・キャブレターを備えていることが多い。車台番号を見れば正しいコンポーネントがわかる。

販売開始時
1966年の発売当初、DB6のサルーンとヴォランテ(コンバーチブル)の価格はともに5084ポンドだった。BMCミニが478ポンド、ロールス・ロイスのシルバーシャドー・サルーンが6670ポンドで販売されていた時のことだ。英国ではフェラーリはさらに高値で販売されており、275GTB/4、330GTS、330GTC、330GT2+2 が6516 ポンド、365GT2+2とGTSは9220ポンドだった。

好況と不況
1980年代後半、DB4はアストンの中でも最も高く評価された車で、DB5を上回った。DB6は、つねに3番手であった。1980年代には最も状態のよいDB6は7万5000ポンド、ヴォランテは17万5000ポンドで取引された。しかし1994年頃には市場が底を打ち、価格はおよそ半分にまで下降した。

DB5の価格がDB4を抜いてからしばらく経つが、DB6はDB4から大きく水をあけられて3番手に留まっている。オープン形式のオークションでは、状態のよいDB6サルーンは25万ポンド超、ヴァンテージはこれよりもはるかに高値で取引されている。最近では、総走行距離1万5000マイルのDB6ヴァンテージ・サルーン(飛びぬけて状態がよいわけではない)が37万3000ポンドで、非常にオリジナルに近い状態で、ワンオーナーのヴァンテージ・サルーンが46万4000ポンドで落札された。名の知れた販売店なら、さらに高い値段で販売されるが、最上級のDB5サルーンなら、100万ポンド近い価格で販売される。DB4や5と比較した場合のDB6サルーンの評価は人によって異なる。

しかし、DB6ヴォランテの長いホイールベースとゆったりとしたリアスペースを考えれば、この車がもっとも洗練され、実用的な4シーター・コンバーチブルであることは間違いない。また、生産台数においてもDB5ヴォランテの123台、DB4ヴォランテの70台に対して、DB6ヴォランテは215台ともっとも数が多く、もっとも手に入れやすい車でもある。今年、俳優で文筆家のピーター・ユスティノフ卿が所有していたDB4ヴォランテやで、DB5ヴォランテは150万ポンド以上で落札された例がある。これに対して、DB6ヴォランテのオークションでの落札価格は、まだ100万ポンドの壁を超えていない。近年、ほとんどのDB6は、50万~75万ポンドで落札されている。DB6がDB4や5に比べて割安であることは確かだ。

Words: DAVE SELBY

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