本物のレーシングカーでちょっとパブまで!? 「ポルシェ911GT1」で公道をドライブしてみる

1997年ポルシェ911 GT1(Photography Charlie Magee)

ポルシェGT1は、量産モデルの911よりもグループCの962との共通点が多く、デイトナを戦ったこともある。ところがこのポルシェは、なんとパブに出かけるのにも使えるのだ。

なぜ、私はここにいるのか。ひょっとして、相応しくない車で相応しくない場所を相応しくない時間に走っているのではないか。きっと、私がさまよっているのは自動車界のパラレルワールドで、それを無理矢理、現実の世界と重ね合わせているのだろう。できることなら、この世界の人々が、異次元からやってきたエイリアンに敵意を示さないでくれと願うばかり。なにしろ"彼ら"も私も同じイギリスの国道"A3"を走っているのだから…。

Another World
私の世界では200mph(320km/h)で走るのが当たり前。したがってリアウィンドウは不要で、最初からそんなものは備わっていない。その代わりに、本来リアウィンドウがあるべき場所を占めているのはカーボンファイバーで作られた数え切れないほどのダクト類だ。にもかかわらず、私が操っているこの車は、現実の世界に存在する車と実によく似ている。ポルシェ911。あなたにも、そう見えるのではないだろうか。

後輪の後方に長く伸びたテールにフラット6エンジンを積んでいることを根拠に、1997年に製作されたこのマシンが、実は1970年代の耐久レースで活躍した935の現代版であると解釈する向きもあるだろう。しかし、それは間違っている。リアオーバーハング部分にあるのは巨大なギアボックス、ターボチャージャー以外に消音効果を持たない2本の長いテールパイプ、そしてリアセクションとリアウィングを支えるフレームワークのみなのだ。肝心のエンジンはコクピットの直後に搭載されているから、これはエンジンをミドシップする911ということになる。いや、そもそもこの車を911と呼ぶのは正しいことだろうか。

いずれにせよ、このマシンはもともとカナダGT1選手権でいくつもの栄冠を勝ち取ったレーシングカーである。それが、いまはイギリスの公道を走ることが許されている。なにしろ、この車には当局が授けた正式なナンバープレートが備えられているのだ。その正体はポルシェ911GT1。マクラーレンF1 GTRの対抗馬としてヴァイザッハが造り上げたこのマシンは、参戦初年度にル・マンでクラス優勝と総合2位という戦績を残している。合計で46台が製作されたうち、レーシング仕様は20台で、残る26台はFIA GT選手権で求められるホモロゲーションを取得するために造られたロードバージョンだ。しかし、私の目の前にあるこのGT1はロードカーとして製作された"シュトラッセ・バージョン"ではなく、本物のレーシングバージョンである。

編集翻訳:大谷達也 Transcreation:Tatsuya OTANI Words John Simister Photography Charlie Magee 取材協力:ランザンテ(www.lanzante.co.uk.)

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