ジョンとヨーコの霊柩車|映画『イマジン』に登場したオースティンA135プリンセス

"イマジン"に登場したジョンとヨーコの霊柩車(Photography:Stephen Kim)



ジョンの時代
アン・ボナハム&サンは1960年代を通じてこの車を所有、ジョン・オノ・レノンに売却したのは1971年8月3日のことだった。ジョンのミドルネームはもともとウィンストンだったが、1969年にサヴィル・ロウ3番地のアップル・ビル屋上で行われたセレモニーで、これをオノに変えたのである。ここはビートルズの"本社"で、このアドレスは霊柩車の車検証にも残されているが、車両の保管場所は赤字で"バークス"と示されている。ジョンとヨーコはアスコットに近いバークシャー州ティッテンハースト・パークに敷地72エーカー(約8万7000坪)の邸宅を構えていた。車検証上の保管場所は、これにちなんだものである。

ふたりがティッテンハーストで暮らしたのは1969年の夏から1971年8月31日まで。ふたりはこの家をリンゴ・スターに売却してニューヨークに移り住んだ。半ばドキュメンタリーで半ばフィクションの映画"イマジン"は、同名のアルバムのプロモーション用としてこの地で撮影されたものだ。

このフィルムに"霊柩車"が登場する2分半ほどのシーンが収められている。フロント・ドアから乗り込んだジョンとヨーコがベンチシートに移ると、車は美しい庭園を走り抜け、ギターの形をした池のほとりにやってくる。そこでふたりは車から降り、岸辺につながれたボートに向かって歩いて行く…。

現在の霊柩車の姿は、このフィルムが撮影されたときとほとんど変わっていないよう見えるが、撮影後のどこかの時点で、レノンは航空機用シート5席をこの車に装着したものと考えられる。

1972年8月17日、オスカーを受賞したこともある映画プロデューサーのウィリアム・マクガゥがこの車を購入。EMAJINというナンバーで登録し、所有していたが、1987年にサザビーの手で売却された。

その当時、マクガゥはこんなふうに語っている。「この車で出かけるとどこに行っても大人気さ。みんな、レノンの素晴らしく酔狂なセンスを直観的に理解したんだろうね」では、なぜそんな価値のある車を売り払ったのか。

「これは世界でいちばん使い勝手がいい車というわけじゃない。いまがそろそろ売り時だっていうわけさ」

ミルトン・ヴァレットは、2005年にロサンゼルスで行われたジュリエンのオークションで霊柩車を購入。このたびロンドンに戻り、およそ25万ポンド(約3200万円)で落札されると予想されていた(結局は落札されなかった)。

Imagine that──想像してごらん。

1956年製オースティンA135プリンセス"霊柩車"
エンジン形式:3995cc、直列6気筒、OHV、シングル・キャブレター
最高出力:130bhp/3700rpm 最大トルク:212lb-ft/2200rpm
トランスミッション:前進4速ノンシンクロ、後輪駆動
サスペンション(前):独立式、コイルスプリングとウィッシュボーン
サスペンション(後):リジッド式、半楕円リーフスプリング、アンチロールバー
ステアリング:カム&ペグ ブレーキ:四輪ドラム、油圧式
性能:最高速度79mph(約126km/h)、0-60mph(0-96km/h)加速 23秒
車重:およそ2200kg

編集翻訳:大谷達也 Transcreation:Tatsuya OTANI Words:David Lillywhite Photography:Stephen Kim

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