シェルビー・コブラCSX2000|史上最も崇拝される伝説的スポーツカーの起源

コブラ"CSX2000"伝説のはじまり(Photography:Pawel Litwinski and Darin Schnabel)



キャロルの情熱が残るコブラ
ヴェガス・スピード・レースウェイに運ばれたCSX2000のボンネットを開けると、製作当時の溶接など、歳月を生き延びた逞しさがそのまま残されていた。ただし、インテリアは別の話で、ドアポケットは真ん中で千切れ、ドライバーズシートはまるでネズミの一家が何年も暮らしていたような有様だった。ブルーのボディカラーがいつ塗られたものかは定かではないが、1962年に皆に衝撃を与えた頃のペイントでないことは明らかだ。すぐに私の番が来た。シートはボロボロだったが、意外なことに私にはグローブのようにフィットし、またサポート性も十分だった。3本スポークのステアリングホイールは身体に近すぎたが、ペダル類の位置は申し分なく、タイトな室内の割にレッグルームも窮屈な感じはなかった。キーをひねってスターターボタンを押すと、CSX2000はしゃっくりをするように目覚め、薄青い煙をテールパイプから吐き出した。ステアリングホイールを切ってみると関節炎のようなひっかかりがあり、手応えはあいまいなものだった。サスペンションにはまったく手が入っていないようだったが、驚くことにレースウェイの鏡のような路面では満足できる乗り心地を見せた。ブレーキペダルははっきりと重いが、レンガを踏んでいるような踏み応えはむしろ頼もしい。スピードとタコメーター、それに水温計も動いていなかったが、不機嫌になるような様子は見られなかった。

強力なパワーを秘めたV8のバルブトレーンが発するノイズは、私にとっては耳を傾けるべき音楽だ。金属ボウルに泡立て器が当たるような機械音にもっとソフトなタペット音が混ざり、素晴らしいハーモニーを奏でている。4段ギアボックスはかっちり引き締まっており、ストロークはやや長いものの、正確に操作することができた。

長い間手付かずのオリジナリティを称賛する人もいるだろうが、撮影のためにセカンドギアで一定速を保っていた時に、コブラが走りたがっていると感じた。思い切り踏み込んでプラグをきれいにしてくれと言っている、そう感じられたのだ。まるで突進したがるサラブレッドの背で手綱を絞っているような感覚である。それが私の妄想やカーボンの堆積ではないことを確かめるために、後でそれを副社長兼テストドライバーであるゲイリー・パターソンに話してみた。「その通り」と彼は答えた。「私も確かにそれを感じたよ」

昔、イソを生み出したピエロ・リヴォルタは、従業員と車の魂について議論をしたことがあるという。「同じ職人が同じ部品を使って、同じラインで同じモデルを作っても、ある車は他のものより活気があり、速く、もっとレスポンスがいい。それは魂が宿っているとしか考えられないのではないか」

パターソンも証言する。「キャロルはいつも、チップを残らずテーブルの上に積んで人生を生きてきた」その強烈なエネルギーが今なおこの車に息づいているのである。それがすべてのコブラとシェルビーの源泉だとしたら、半端に手綱を引くことなど許されるべきではない。新しいオーナーはそれを尊重してCSX2000を育んでほしい。最初のコブラは、あまりにも長いことできなかった全開走行を切望しているのだ。

1962年シェルビー・コブラCSX2000
エンジン形式:4262cc、OHV、フォードV8、ホーリー4バレル・キャブレター×1基
最高出力:260bhp/6500rpm 最大トルク:269lb-ft/3600rpm
トランスミッション:4段MT 後輪駆動 ステアリング:ウォーム&セクター
サスペンション前:ロワーウィッシュボーン、
アッパー横置きリーフスプリング、ハイドロリック・ダンパー

サスペンション後:リジット式 ロワーウィッシュボーン、
アッパー横置きリーフスプリング、ハイドロリック・ダンパー

ブレーキ:4輪ディスク(リアはインボード) 車重:918kg
性能:最高速152mph(244km/h)/0-60mph加速4.1秒

編集翻訳:高平高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA Words:Winston Goodfellow Photography:Pawel Litwinski and Darin Schnabel

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