アウディ・クワトロでモンテカルロを走る|30年前に革命児と評価された四駆パフォーマンスを体感

1982年アウディ・クワトロ(Photography:Martyn Goddard)



次々と現れるコーナーを抜けながら、ステアリングの心地よさや、わずか205サイズのラジアルタイヤが示すグリップの力強さ、すべてを吸収する乗り心地の素晴らしさを改めて痛感した。だが同時に、クワトロの欠点も思い知る結果となった。ブレーキと、レシオが分散しすぎているギア比だ。

初期のクワトロに乗ったドライバーは、ブレーキの食いつきやレスポンスが鈍く、安心して減速できないことを不満に思ったものだ。また、ABSの備えがないのも最先端技術が売りの車にしては奇妙に感じられた。「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」を掲げるアウディのイメージにそぐわない。現代の基準では何ともお粗末なブレーキだ。ABSがない車でハードに攻めれば、当然ロックし、スライドする。足をすくわれたオーナーは多かった。踏ん張りのきくコーナリング能力を備えながら、制動力が月並み、あるいはそれ以下なのである。

もうひとつの問題は、低速のギア比が離れすぎていることだ。3速から2速へ、あるいは急なヘアピンで1速まで落とす際に、間隔を埋めるだけの派手なブリッピングが必要になる。そうしないと下のギアが入ったときに振動を食らう。そのうえ滑らかに動くシフトではないから、クワトロのギアチェンジは昔ながらの力業である。

それでも、エンジンを3000rpm以上のおいしい回転数に維持できれば、滑らかに気持ちよく飛ばすことができる。アルプス山麓の道なら大部分で自然とそうなるから、クワトロが奏でるあの独特の歌声を堪能することも可能だ。

私たちは1日半かけて、他にも3カ所のステージを走破した。1982年に観戦したファイエ峠とガルシネ峠、もう1カ所はシステロンからトアールまでD3を行く37kmのコースで、こちらは初体験だった。

最も壮観なのがファイエ峠の道だ。私たちは、1999年のモンテのコース31.15kmを逆向きに走った。ヴァンタヴォンを出発し、ファイエ峠を越えて、D21、D48、D49、D149、D20とつないでバルシヨネットを通過し、プラン=ド=ヴィトロルまで行く。高速で飛ばせる見通しのよい部分があるので、頻繁にギアチェンジせずに全開で走ることができるし、右・左・右・左とシケインが連続するようなゾクゾクする区間もある。

4分の3ほどを走破し、シャトーヌフ=ドゼの南西まで行くと、道は険しい灰色の頂きに入っていく。山中を続くD20には小石が散乱し、急ハンドルで避けなければならない場所もあった。だが、坂を登り切ると絶景が待っていた。眼下に広大な谷間が広がり、はるか遠くのラ・ソルスまで見通すことができる。その先も、月面のような荒涼とした山肌に沿って道が伸びていき、圧倒的な光景が続いた。

だが実のところ、どの道を選ぶかは問題ではない。アルプス山麓には、ドライビングの楽しみを堪能できる魅力的でチャレンジングなルートが豊富にある。地図のどこを見ても選び放題だ。道の数だけ絶景もある。モンテカルロ・ラリーで実際に使われたルートを見つけたいなら、インターネット上にはwww.rally-maps.comのような情報源がたっぷりある。1973年まで遡るスペシャルステージのデータをまとめたwww.ewrc-results.comもある。モンテの宿泊地としておなじみのギャップは、レストランも多く、ベース基地として好都合だ。私たちは、パストゥール通り18番地のラ・メゾン・ジューヌを宿にした。ありがたいことに月曜の夜も営業しているのだ。

4つのステージを走り切って心から満足した私たちは、ナポレオン街道を南下して高速のA51に乗った。ここでも長距離を悠々と走破できるクワトロの優秀さに感嘆する。ただ、気温34度という暑さだったので、エアコンがあれば最高だったろう。とはいえ、1982年に1週間クワトロで旅をしてみて、グランドツアラーとしても抜群であることは実証済みだ。しかも悪天候では無敵だった。30年以上たった今でも称賛に値する車で、その爽快さはブレーキとギア比の欠点を補って余りある。クワトロには、それだけの能力と懐の深さが備わっているのだ。

四輪駆動によって、山道でも安定した無駄のないハンドリングが可能となる点は、今も30年前も変わらない。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Mel Nichols Photography:Martyn Goddard

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