憧れのボンドカー9選|『007/ゴールドフィンガー』から『007/慰めの報酬』まで

ボンドカー大全



トヨタ2000GT
『007は二度死ぬ』/1967



『ゴールドフィンガー』でボンド映画の基本的要素はほぼ出揃ったが、ロアルド・ダールが脚本を書いた『007は二度死ぬ』では、"敵の地下要塞"が初登場している。日本の火山内部に造られた秘密基地で、悪の天才ブロフェルド(ドナルド・プレザンスの名演が印象的)とボンドが初めて対面するのだ。コネリー演じるボンドは、
バレバレの"変装"で日本人になりすましたりしながら、最終的にはいつものように悪の手から世界を救う。

1967年公開の本作は、われわれ"偏狭な"イギリス人が当時抱いていた日本に対する後進国というイメージを覆した作品だった。車載テレビや地下鉄の公安トップ専用車両など、MI6顔負けのガジェットを生み出すハイテクの国として日本を描いている。

今やボンド映画の伝統となっているが、トヨタ2000GTもやはり発売直後だった。『007は二度死ぬ』は、国際的な露出の場として願ってもない舞台となったのである。

コンバーチブルの2000GTは市販されていない。工作員であるアキの車として登場したこの姿を見れば、トヨタが絶好の機会を逃したのは誰の目にも明らかだ。アルベルト・ゲルツに端を発するデザインの素晴らしい発展形となっていたことだろう。生産されなかったのが不思議なくらいだ。実は、2000GTオープントップは意図的なものではなく、偶然の産物だった。長身のコネリーがクーペに収まりきらなかったのだ。トヨタが最初に考えた解決策はタルガトップだったが、コネリーの頭だけが飛び出して、いっそう滑稽になってしまった。映画出演のチャンスをつかむには、ルーフを切り取る以外ない。これをトヨタは急ごしらえで仕上げなければならなかった。そのため、リアのソフトトップカバーはダミーに過ぎず、その下にフードは存在しない。

トヨタは主役以外にも、撮影に多くの車を提供した。クロームが効いたクラウンもそのひとつだ。オーサトの手下たちはクラウンに乗ってボンドとアキの背後に迫るが、強力な電磁石でCH-47ヘリコプターから吊り下げられ、最後には東京湾に投げ捨てられてしまう。

2000GTコンバーチブルは撮影用に2台製作された。1台はトヨタ博物館に収蔵されており、もう1台は表舞台から姿を消している。

2000GTの生産終了後、トヨタはスポーツカーからしばらく遠ざ
かった。コネリーも、本作を最後にボンド役から降りた。だが、どちらも1980年代に華々しく復活するのだった。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.)Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Paul Hardiman Photography:Ashley Border, Simon Clay, Paul Harmer

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