サハラ砂漠をフェラーリ・テスタロッサで走ってみてわかった3つの注意点

フェラーリがサハラ砂漠を行く



楽しみにしていた峠に向かう上り坂は、しかしまったくの期待外れであることが間もなく判明した。歩むように進む過積載のトラックが連なり、山道を塞いでいたのだ。そこで道端の土産物屋に立ち寄り、化石や珍しい石など物色して気分転換を図った。峠の頂上に近づくにつれて路面状態は酷くなっていった。路面を覆う泥と砂利に加えて大きな穴も開いており、追い越しはほとんど不可能。やはり思った以上にタフなコンディションである。

何とか2260mの峠に到着すると、雲間から太陽が顔を出し、雪の気配とともにトラックの群れも姿を消した。ようやくテスタロッサをそれらしく走らせることができる。山を下りるにつれて路面状態も良くなり、12気筒の咆哮が岩山にこだまする。いつの間にか晴れ上がった空の下には驚くべき景色が広がっていた。私たちの頭上にはゴツゴツとした崖が聳え立ち、眼下の谷間には畑がパッチワークを織り成していた。行き合う男たちは皆フード付きのマント(ジェラバ)をまとい、薪を集めている人もいればロバに跨っているものもいる。たった一日ちょっとでなんと違う世界に来たことだろう。

マラケシュから125マイル(200km)ほど走ってワルザザートで給油(リッター60ペンス:約115円)した。この街は映画のロケ地として有名で、『アラビアのロレンス』「や『スターウォーズ』、『007リビングデイライツ』などが撮影されたという。ダデス渓谷に沿ってエルラシディアに向かえば、大作映画の監督がここを選んだ理由が誰にでも納得できる。あらゆる方向に人工物のまったくない広大で剥き出しの大地が果てしなく続いているのだ。

私たちは先を急いだが、どうやらエルラシディアの砂漠で一泊という当初の予定を変更しなければならないようだった。地図上の目印間の距離は実はいい加減で、実際にはその2倍ほどあるらしく、8時間という予定は楽観的に過ぎたようだ。ここまで来るとスピードトラップを見かけることはなくなったが、街に出入りする際には地元警察の検問所で停められることは変わらない。

太陽がゆっくりと地平線に沈み、すべてが闇に包まれていく。たとえテスタロッサの四灯ヘッドライトが非常に強力で頼もしく闇を切り裂いてくれるとはいえ、歓迎できることではない。問題は無灯火のトラックや車、自転車、歩行者が次から次へと現れることだった。まるでそれがモロッコの国民的スポーツであるかのように、何もないところから路上に迷い出る歩行者や自転車乗りに疲れ果てた私たちは、予定より40マイルほど手前ではあったが、エルフォウドに入って最初に見つけたホテルに投宿することにした。幸運なことにスタッフはこれ以上ないほど親切で、遅い時間にもかかわらずキッチンを開けて夕食を、しかもびっくりするほど見事な地元の赤ワイン付きで用意してくれた。

編集翻訳:高平 高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA Words:Harry Metcalfe Photography:Justin Leighton

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