真二つに評価が別れた英国車「ラ・サルト」は、伝統の継承者か?名車ディティールの寄せ集めか?

Photography:Tim Andrew 



帰路、私はロンドンにあるRRとベントレーのスペシャリストであるフランクディルの経営陣のひとり、アイバー・ゴードンに電話をかけた。彼は数十年にわたってRタイプ・コンチネンタルを所有していたのだ。彼は即座に「エイヴォン製のラジアルタイヤに変えるべきだよ」と答えた。フレッシュなタイヤを履けばラ・サルトは豹変し、最終的には衣の下のRタイプが現れるという。なるほど、そういうことか。

エンジンは高速用のカム、"タコ足"のエグゾーストマニフォールド以外にほとんど手を入れていない。またシャシーは基本的にストックのままだが、フロントサスペンションの若干の補強とアンチロールバー、リアのキャンバー調整とアンチロールバーの追加がある。歩むような速度を超えれば、ステアリングは目に見えて軽くなるがコーナリングの際の不正確性は残る。これはメカニカルな要素よりはタイヤに依るところが大きいのだろう。加えて、今まで英国車に装着された中でも最大級といえるステアリングホイールの巨大さ。つまりドライバーのインプットも、それに比例して大きくなければならないということだ。ベンスポーツのテクニシャン、アンディ・ペリーは、英国とヨーロッパの両方で数千マイルを走破したので、これが完璧にドライバブルなことは証明済みということだ。

タイヤは別として、確かにこの車は快適なスピードと上品なアクセレーションを持つ、素晴らしくリラックスしたグランドツアラーだ。性能に関してはロールス・ロイス社がいうところの「必要にして充分」であることは間違いない。優雅な気分をぶちこわすのは、速度が上がるにつれて大きくなるタイヤノイズだ。私のiPhoneに録音されたものをあとで聞いてみると、まるでロンドンの地下鉄に乗っているようにも思えた。この解決法はシンプル。速く走ることだ。こうすればタイヤのノイズはすぐにハイピッチになり、やがて聞き取れなくなる。

緩やかな車の流れを一気に追い抜くことは快感だ。本物のオールドカーが本気のスピードで走り去る姿を見る機会はそれほど多くはないだろう。追い抜かれた車の中での会話が聞こえてくるようだ。「今吹っ飛んで行った灰色のレイス(精霊)はなんだったんだ」いや、実はこれはRRレイスではなく、その後継車であるRタイプなのだが…。

ベンスポーツは10台以上のラ・サルトは造らないと明言している。これは208台だけ作られた本物のRタイプ・コンチネンタルに通じる、ラ・サルトの顧客へむけた特別感のアピールなのだ。このような展開方法を見る限り、35万ポンドのプライスタグには頷ける。


前にも後ろにも車の見えないカントリーレーンを高速で流すラ・サルト。そのパフォーマンスは少なくともコンチネンタルと同等に軽快で、スタイルも同じくらい人目を引く

2014年ラ・サルト
エンジン:4566cc、直列6気筒、IOE(inlet over exhaust)、SU H6キャブレター×2基
最高出力:145bhp/3500rpm 最大トルク:246lb-ft/900rpm変速機:前進4段MT、後輪駆動 
ステアリング:カム・ローラー
サスペンション(前):独立式、ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、レバーアームダンパー、
アンチロールバー サスペンション(後):非独立式、リジッドアクスル リーフスプリング、レバーアームダンパー、
アンチロールバー ブレーキ:ドラム、サーボアシスト 重量:1600kg
最高速度(推定):115mph(180km/h) 060mph(推定):12秒



ラ・サルトに搭載されるR-タイプ用4.6リッターエンジンは、ほとんどオリジナルのままだが、インテリアはすべて新しい。素晴らしい仕上げのウォールナットのウッドワーク、注文製作の計器類、オリジナルのレザー内張り

編集翻訳:小石原 耕作 Transcreation:Kosaku KOISHIHARA Words:Mark Dixon 

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