マイクロカーとリーンマシーン|Jack Yamaguchi’s AUTO SPEAK Vol.4

トヨタi-ROAD



この現象に激怒した英民族系大同メーカーBMCのレナード・ロード会長がアレック・イシゴニスに開発を命じたのがADO15ミニである。

大型車天国と思われがちなアメリカだが、1920年代から超小型車があった。簀の子状木板フレームにシート2個を取り付け、小排気量単気筒エンジンとトランスミッションを備えた第5輪で推進する。有名なのがブリッグス・アンド・ストラットン・フライヤーで、汎用エンジン大手同社がA.O.スミスの製作した車を会社ごと買い取ったものだ。名古屋市のトヨタ産業技術記念館自動車館入口には、スミス・エンジンの実物と豊田喜一郎トヨタ自動車創業初代社長が自動車事業に乗り出すべく、まずは自転車のエンジン駆動実験を計画し、技術者とともに検討している原寸ジオラマが展示されている。

1969年、なんとGMがイセッタ型前1枚ドアのガソリン車、EVプロトタイプの"XP512"を試作した。最近では、上海EXPO 2010で複数車がデモ走行したのがGM "EN-V" だ。前ドア2人乗りで、2輪で走行する。並列2輪立ち乗りスクーター"セグウエイ"との共同開発で、後者の2輪バランス機構を用いる。GMは2014年ITS会議において、自律走行4輪型"EN-V2.0"を発表、中国天津エコシティ地域での実証計画を打ち出した。

大メーカーでは、ビジネスケースとしての成立検討から、革新発想が実現しづらいことが往々だ。1992年、GMの数人のエンジニアが独立し、創設したのが超小型EV製作販売会社だ。その後、「ご近所電動車NEV」と通称される車を発表した。グローバル・エレクトリック・モーターカーズの頭文字をとり、"GEM"と名付けたゴルフカートに最小風雨防備を備えたような車だ。クライスラー資本下を経て、現在はカナダUVメーカー、ポラリス社の傘下にある。世界累計販売数は5万台を超えている。

川上完さんと一緒に乗りたかったマイクロカーがトヨタ"i-ROAD"だ。2ドア、ふたり乗り超小型車、ユニークなデザイン、そしてなによりも乗って楽しい三輪車は、"完要件" にぴったりだ。最大特徴は、リーンカーである。コーナリング中は電子制御で車体、車輪が内側に傾き、しっかり路面をグリップする。操舵は後1輪で行う。トヨタ市で数台、フランス・グルノーブル市で35台の実証走行が進行中だ。

リーンカー、あるいはキャンバーカーなる構想は半世紀前からあった。1960年代に米コーネル大学航空研究所の技術者が製作した前2輪、後ろ1輪ゴーカートは、50゜傾斜し、最大横加速1.2Gを出した。同研究所長であった旧友、故ビル・ミリケンは、60年代にミドエンジン・レーシングカー、"MX-1"を製作した。2002年、メルセデス・ベンツがスポーツカーコンセプト、"F400カービング" を発表すると、触発されたミリケンはMX-1を引っ張り出し、2002年と07年グッドウッド・スピード祭典ヒルクライムに挑んだ。4輪が最大22゜ネガ傾斜し、ヒルクライムでは最大横加速1.0Gを出す。彼はMX-2を設計し、2011年100歳の時、カナダのサプライヤーが製作した実車に試乗した。

Kyoichi Jack Yamaguchi

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