モダンクラシックメルセデス|最新エンジンにレストアする「メカトロニック」の驚くべき実力

モダンクラシックメルセデス

クラシックカーを改造することに対する感覚は人それぞれであるが、このMechatronik(メカトロニック)によって見事に生まれ変わった1960年代のメルセデスには、誰しも心奪われずにはいられないだろう

松の木の日陰の下で、その車を待つ
アフリカならではの、眩しいコバルトブルーの空が広がっている。この素晴らしいワインランドをつくりだしている山々や渓谷。その東側に広がるインド洋からのひんやりとした風が、じりじりと照りつける午後の日差しを和らげてくれていた。

有名なフランシュフック・パスの頂上でカメラを用意して待っている私たちの側をモダンな車が静かに通り過ぎていく。素晴らしい眺めだ。断崖から目眩がするような山肌を見下ろすその下に観光客が集まるフランシュフックビレッジ、そして遥かかなたにはケープ・ペニンシュラからテーブルマウンテンまでを見渡すことができる。ここで育った私は、いつも喜望峰のその偉大さに心を奪われる。

様々な車が低い音を響かせながら、そして時折多くの荷物を載せたトラックがうなるような音をさせながら急な坂道を上がってくる。すると、谷のずっと下から全く違うサウンドが聞こえてきた。低温で少し耳障りな音だ。その音は大きくなったり小さくなったり、シンコペートして鼓膜をふるわせるようだ。メリハリがきいて迫力がある。姿が見えた。跳ぶように泳ぐ魚のごとく、太陽の中を2つの光が走ってくる。そうかと思うと、また緑の中に姿を消す。その心地よい音は次第に強くなり、大きなエンジンの鋭い轟音が上流へと近づいてくる。 

カメラマンのイアン・マクラーレンが、長いレンズを備えたニコンのカメラを連写モードへと切り替える。2台のアイスブルーのマシンは、もう3コーナー下まできていた。マシンを取り囲む岩肌が、多気筒エンジンが奏でる力強いオーケストラのような音をさらに響かせる。2台のメルセデス・ベンツが続けざまに岩場を走り抜けると、私たちの様子を不思議そうに見ていたバブーンがフィンボスの中へと一目散に逃げ出す。最新スポーツカーの速度でレンズの前を駆け抜けるのが、1960年代のクラシックベンツだとは気づく間もない。響き渡る軽快なサウンド。耳をつんざき、パワーが地面を通して足に伝わる。車はアッという間に視界から消え、ゆらゆらと立ち上る陽炎の中でコオロギが鳴いている。メルセデスの後ろからの眺めはさらにほれぼれとする。 数々のメーカーの中で、メルセデス・ベンツは常にずば抜けて革新的、または斬新であったというわけではないが、一貫して卓越した技術やクオリティを目指してきたことは事実だ。1950年代から1990年代の初期にかけて、ベンツは素晴らしい製品を世に送り出していたが、その後経済的な問題によりコスト削減に追い込まれ、品質を保つことが難しくなり、特に南アフリカで組み立てられたCクラスは度々非難を受けることになった。しかしベンツは現在蘇っている。ここにある2台は1960年代全盛期の代表ともいえる。 

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