クラシックカーに魅せられ、日本の世界遺産を巡ることをテーマに始まったラリーニッポン。参加者に多くの驚きと感動を与えるために、毎年新しいユニークなコースを探す努力を厭わない。中には台湾での開催や、ペニンシュラグループを招いての国内開催など、回を重ねる毎に国際的な面も増えてきた。開催10回目の節目に選んだ場所は、モンタレー・カーウィークで有名な北米カリフォルニアである。
クラシックカーの聖地を自身で走る楽しみ
日本航空のJL001便はサンフランシスコ-羽田であることをご存じだろうか。まだ成田空港がなかった時代に、JALが初めて世界と日本を繋いだ航路はサンフランシスコだったのである。今や観光だけでなくIT、ワインなど様々な意味で日本と深い関わりをもつカリフォルニアの北部。中でもサンフランシスコから南に約 120マイルにあるモンタレー半島では、毎夏「モンタレー・カーウィーク」という世界でも最大級のクラシックカーイベント群が約 10日間に渡って開催される。
モンタレー・カーウィークは盛りだくさんだ。誰もが耳にしたことのある高貴なイベントとしては、ペブルビーチ・ゴルフリンクスで開催されるコンクール・デレガンスが挙げられるだろう。またカーメル・バイ・ザ・シーというおとぎ話に出てきそうな小さな海沿いの町で開かれるコンクールもカジュアルで愉快だし、ほんの10マイルほど走ればコークスクリューというコーナーで名を馳せたラグナ・セカというサーキットがあり、往年のレーシングカーが本気で走り回る怒涛の迫力を感じることができる。モンタレーは今や、ある意味クラシックカーの聖地と呼べるようなエリアになっている。
ラリーニッポンが記念すべき10回目の開催地として、このカリフォルニアを選んだ目的はまさにそこにある。「ここ数年モンタレーを訪れていますが、この独特の澄んだ空気は、ご自身で来て、できればご自分の車で走っていただかなければ伝わらない。カーウィークの開催時期ではありませんが、ゴールデンゲートブリッジを渡ってペブルビーチリゾートやカーメルを巡り、ラグナ・セカをご自身でハンドルを握って走っていただくことができれば、最高の感動を味わっていただけるのではないか、そう思ったのです」ラリーニッポン主宰の小林雄介氏はそう語る。「モンタレーを中心に全 4日間の行程を計画しました。走りながら、しかもアメリカらしい壮大な景色を満喫していただくため、あえて宿泊場所は1箇所にしました。そこはクェイルロッジというゴルフリンクであり、最近ではカーウィーク期間のモータースポーツギャザリング開催地としても著名な場所です」
今回の参加車両は50台。多くは日本など北米以外のオーナーが所有するクラシックカーを運んできたが、数台は現地でレンタルした車。そして北米在住の外国人参加者が複数名おられたことも特筆であろう。
初日のゴールはクエイルロッジゴルフリンクス。芝の上に置くとクラシックカーの美しさは何倍にもなる。これも日本ではなかなかできない体験だ。
毎日のステージで、異なる演出を楽しめる
4日間の行程は、ドラマチックな演出に富んでいる。
1日目はサンフランシスコのベイエリア、マリーナグリーン公園からスタート。足慣らしも含め約 140マイル(約230㎞)だったが、ゴールデンゲートブリッジを渡り、芸術家の街サウサリートを抜け、PCH(パシフィック・コースト・ハイウェイ)を一気に南に下るルートだ、海と緑豊かな丘陵地帯であるサンフランシスコを満喫できるコースである。 2日目はワイナリーなどが点在する、山脈の合間にあるのどかな田園風景を楽しむルート。約 250マイル(約400㎞)の長丁場であるが、午後は「アメリカにもこんなツイスティなワインディングがあるのか!」と驚くようなアップダウンのあるタフなワインディングで腕を試される。
3日目の目玉は何と言ってもラグナ・セカ。1957年に造られたオールドサーキットで、高低差約 15mもあるS字シケイン「コークスクリュー」で名を馳せた名物コースである。もちろんレース形式ではなかったものの、ベテラン先導車に続き、各車それぞれの思い切ったスピードで愛車の走りを確かめることができる。そしてランチはコンクールの最終会場に使われるペブルビーチの18番ホールを眺められるクラブハウスが選ばれていた。この日の走行距離は約100マイル(約160㎞)。
最終日4日目は自然の中に身を投げ出すような、まさに風光明媚なルートで、約 175マイル(約280㎞)を走る。様々なCMでも使われているビグスビー橋を含むビッグサー(Big Sur)は、太平洋岸からの隆起によって造られたアメリカ大陸らしい地形である。
参加者に話を聞くとほぼ異口同音に「毎日が感動の連続」「疲れるより、楽しいが勝る」といったコメントが飛び出してきた。 「私たちオーガナイザーは、もちろん出来る限りの準備は行いますが、最も大事にしたいことは"エントラントと一緒に作り上げていくクラシックカーラリー"という考え方です。だから参加していただいている皆さんが『うちのラリーはね…』と、まるで自分ごとのような表現でラリーニッポンを語っていただけると、とてもうれしくなります。そして、笑顔で参加して笑顔で帰っていただくこと、とにかくそれに尽きます」と小林雄介氏は続ける。
今回オクタン日本版としては運営スタッフの動きもじっくりと取材することができた。「お客様第一優先」を掲げるラリーニッポンだけあり、行程の中で起こる大小さまざまな相談事やトラブルにもすべて迅速かつ真摯に対応する姿勢がそこにあった。朝から深夜まで様々なことに対してきちんと応対しようとする女性スタッフ陣。メカ二カルなトラブルにはベテランスタッフがアドバイスやメンテナンスも実施。また関東自動車大学校の運営協力では、指導教授も参加して的確な指示のもとスムーズな運営を現場で学んでいた。その他現地における突発的な交渉は、英語が堪能なスタッフが熱量をもって対応するので、何ともならないことが時として何とかなったりするのである。朝晩のいわゆる賄い飯(実は美味しい!)を用意し、食事の場所さえ大切な意思疎通の場所にするという情報共有の方法も、臨機応変さを求められるこういった企画ではとても重要であると感じた。すべてはスタッフも一緒に楽しもうという意識があってのことである。
11回目のラリーニッポンは2019年秋、九州一周というルートで開催される。すでに海外からの参加申請もあり、何とも国際的になってきた。「日本再発見」のラリーニッポンがどうやらさらに面白くなってきそうである。
文:オクタン日本版編集部 写真:オクタン日本版編集部、ラリーニッポン Words:Octane Japan
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